核心概念
マルチモーダル大規模言語モデル (MLLM) は、画像とテキストを組み合わせた推論タスクにおいて、特に抽象的な概念理解と複数画像間の関係推論に限界がある。
書誌情報: Małki´nski, M., Pawlonka, S., & Ma´ndziuk, J. (2024). Reasoning Limitations of Multimodal Large Language Models. A case study of Bongard Problems. arXiv preprint arXiv:2411.01173v1.
研究目的: 本研究では、マルチモーダル大規模言語モデル (MLLM) の推論能力、特に抽象的な視覚的推論 (AVR) タスクにおける能力を評価することを目的とする。
方法: 著者らは、Bongard問題 (BP) をケーススタディとして使用し、4つの商用MLLM (GPT-4o、GPT-4 Turbo、Gemini 1.5 Pro、Claude 3.5 Sonnet) と4つのオープンアクセスMLLM (InternVL2-8B、LLaVa-1.6 Mistral-7B、Phi-3.5-Vision、Pixtral 12B) の性能を評価した。評価は、合成画像ベースの従来のBPデータセット、現実世界の画像ベースのBongard-HOIおよびBongard-OpenWorldデータセット、そして著者らが作成した現実世界の画像を用いて合成BPの概念を表現したBongard-RWRデータセットの3種類を用いて行われた。さらに、MLLMの推論能力を多角的に評価するため、自由回答形式と二値分類形式の両方で、多様なプロンプト戦略を設計し、評価を行った。
主な結果:
全体的に、MLLMはBP解決において、特に抽象的な概念の理解と複数画像間の関係推論において、依然として大きな限界を示した。
従来の合成BPデータセットでは、最良のモデルでも100問中22問しか正答できなかった。
現実世界の概念を扱うBongard-HOIおよびBongard-OpenWorldデータセットでは、パフォーマンスは幾分向上したが、依然として課題が残った。
Bongard-RWRデータセットを用いた実験では、MLLMの合成BPに対する低いパフォーマンスはドメイン固有のものではなく、むしろ推論能力の限界を反映していることが示唆された。
二値分類タスクでは、いくつかのモデルが期待できる結果を示し、今後の進歩によって現在の限界を克服できる可能性が示唆された。
結論: 本研究は、MLLMが画像とテキストを組み合わせた推論タスクにおいて大きな可能性を秘めている一方で、抽象的な概念の理解や複数画像間の関係推論など、克服すべき課題も残っていることを示唆している。
今後の研究:
本研究では、MLLMの推論能力の限界が明らかになった。今後の研究では、これらの限界を克服するための新しいモデルアーキテクチャや学習方法を探求する必要がある。
特に、抽象的な概念をより効果的に表現し、推論するための方法を開発することが重要である。
また、複数画像間の関係をより深く理解し、利用するための新しいモデルアーキテクチャや学習方法を探求する必要がある。
統計
最良のモデルでも、従来の合成Bongard問題100問中22問しか正答できなかった。
Bongard HOIデータセットでは、最良のモデルで100問中45問の正答率だった。
Bongard-OpenWorldデータセットでは、最良のモデルで100問中57問の正答率だった。
Bongard-RWRデータセットでは、最良のモデルでも60問中13問しか正答できなかった。