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リズム的に活動するネットワークにおけるシナプスコンダクタンスの推論手法と呼吸中枢パターン生成回路への応用


核心概念
本稿では、リズム活動する神経回路における単一ニューロン細胞内記録から、興奮性および抑制性シナプスコンダクタンスを高時間分解能で抽出し分離する汎用的な手法を提案し、その手法を哺乳動物の呼吸中枢パターン生成回路に適用して、回路内の機能的結合と回路構成を明らかにできることを示している。
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Ramirez, J. M., & Smith, J. C. (2024). Inference technique for the synaptic conductances in rhythmically active networks and application to respiratory central pattern generation circuits. Journal of Neurophysiology, 121(6), 1089–1104. https://doi.org/10.1152/jn.00216.2023
本研究は、リズム活動する神経回路における単一ニューロン細胞内記録から、興奮性および抑制性シナプスコンダクタンスを高時間分解能で抽出し分離する汎用的な手法を開発することを目的とした。

深掘り質問

この手法は、呼吸回路以外のリズム活動する神経回路、例えば歩行運動や睡眠覚醒サイクルを制御する回路などにも適用できるか?

この手法は、呼吸回路に限らず、歩行運動や睡眠覚醒サイクルなど、他のリズム活動する神経回路にも広く適用できます。この手法は、活動電位発生のタイミングや強度ではなく、細胞内記録からシナプスコンダクタンスを抽出するという点に新規性があり、様々なリズム活動に応用可能です。 具体的には、論文中で示された呼吸回路の解析と同様に、対象とする神経回路の活動サイクルを位相ごとに区切り、各ニューロンの活動電位発生パターンとシナプス入力の変化を対応付けることで、機能的な神経回路の構築が可能となります。 例えば、歩行運動を制御する神経回路では、歩行サイクルの各フェーズ(立脚期、遊脚期など)におけるシナプス伝達のダイナミクスを明らかにすることができます。また、睡眠覚醒サイクルを制御する神経回路では、ノンレム睡眠、レム睡眠といった異なる睡眠段階における神経活動の特性や、覚醒状態への移行に関わるシナプス伝達のメカニズムを解明する手がかりとなる可能性があります。 重要なのは、この手法が in vivo や in vitro などの様々な実験環境、また、電流固定記録や電位固定記録といった異なる記録方法にも対応できる点です。そのため、様々なリズム活動を示す神経回路に対して、シナプス伝達レベルでの理解を深めるための強力なツールとなりえます。

この手法は、シナプス可塑性などの神経回路の長期的な変化を調べるために利用できるか?

この手法は、シナプス可塑性などの神経回路の長期的な変化を調べる上でも有用なツールとなりえます。 シナプス可塑性とは、神経活動に応じてシナプス伝達の強度や性質が変化する現象であり、学習や記憶、発達などの基盤となる重要なメカニズムです。この手法を用いることで、特定の刺激や経験を与えた前後におけるシナプスコンダクタンスの変化を、興奮性/抑制性に分けて経時的に捉えることが可能となります。 例えば、長期増強(LTP)や長期抑圧(LTD)といったシナプス可塑性の誘導実験において、この手法を用いることで、シナプス伝達効率の変化をより詳細に解析することができます。具体的には、興奮性シナプス後電流(EPSC)や抑制性シナプス後電流(IPSC)の振幅や頻度の変化を、位相情報と組み合わせることで、可塑性が発現するタイミングや強度をより正確に評価することが可能となります。 さらに、この手法は、薬物投与や遺伝子改変などによる神経回路への操作の影響を評価する際にも有用です。特定の神経伝達物質受容体やイオンチャネルを標的とした薬物投与や遺伝子改変は、シナプス伝達や神経回路の活動に変化をもたらします。この手法を用いることで、これらの操作がシナプスコンダクタンスに及ぼす影響を、興奮性/抑制性の観点から詳細に解析することが可能となり、神経回路の動作原理や疾患メカニズムの理解に貢献すると期待されます。

この手法で得られた機能的結合の情報は、神経回路の活動パターンを予測するための計算モデルの構築にどのように利用できるか?

この手法で得られた機能的結合の情報は、神経回路の活動パターンを予測するための計算モデルの構築において、非常に重要な制約条件となります。 従来の神経回路モデルでは、シナプス結合の強度や伝達遅延などがパラメータとして設定されていましたが、その妥当性を検証することは容易ではありませんでした。しかし、この手法を用いることで、実際の神経細胞における興奮性/抑制性シナプス入力の時間変化を定量化し、それを基にモデルパラメータを最適化することが可能となります。 具体的には、得られたシナプスコンダクタンスのプロファイルを基に、コンダクタンスベースのニューロンモデルや Hodgkin-Huxley 方程式などの数理モデルを用いて、神経回路の活動をシミュレーションします。この際、モデルのパラメータを調整することで、実験データとシミュレーション結果の適合度を高めることが可能となります。 さらに、この手法で得られた機能的結合の情報は、神経回路の構造と活動の関係を理解するための重要な手がかりとなります。例えば、特定のニューロン集団における興奮性/抑制性シナプス入力のバランスや、フィードバック結合、フィードフォワード結合などの回路構造を明らかにすることで、神経回路における情報処理のメカニズムを解明することに繋がります。 このように、この手法で得られた機能的結合の情報は、神経回路の活動パターンを予測するための計算モデルの構築において、精度の向上と生物学的妥当性の担保に大きく貢献すると期待されます。
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