核心概念
地震波解析におけるノイズ除去問題において、対称オートエンコーダを用いることで、従来のスタッキング手法よりも高精度に地殻構造をイメージングできる。
要約
研究目的
本論文は、地震波解析に用いられるレシーバー関数におけるノイズ除去問題において、対称オートエンコーダ(SymAE)を用いた新しい手法を提案し、その有効性を検証することを目的とする。
方法
- 地震波形データからレシーバー関数を計算し、バックアзиムスと震央距離に基づいてグループ化する。
- SymAEを用いて、各グループのレシーバー関数から、地殻構造を反映するコヒーレントな成分と、ノイズを表す非コヒーレントな成分を分離する。
- 分離されたコヒーレントな成分を用いて、ノイズが低減された仮想レシーバー関数を生成する。
- 提案手法を、現実的なノイズを含む合成レシーバー関数と、カスケード沈み込み帯の実際の地震波形データに適用し、その性能を評価する。
結果
- 合成データを用いた実験では、SymAEを用いることで、従来の線形スタッキングや位相重み付けスタッキングよりも、真のレシーバー関数に近い結果が得られた。
- カスケード沈み込み帯のデータ解析では、SymAEを用いることで、従来手法では不明瞭であった多層構造を持つ沈み込むプレート境界を明確にイメージングすることができた。
結論
- SymAEは、レシーバー関数からノイズを効果的に除去し、地殻構造のより正確なイメージングを可能にする強力なツールである。
- 提案手法は、従来のスタッキング手法よりも、ノイズの多いデータや複雑な地質構造を持つ地域においても有効である。
意義
本研究は、地震波解析におけるノイズ除去問題に対する新しいアプローチを提供し、地殻構造の理解を深めるための重要な貢献を果たすものである。
限界と今後の研究
- 本研究では、特定のタイプの地殻構造モデルとノイズモデルを用いており、より一般的なケースへの適用可能性を検証する必要がある。
- SymAEのハイパーパラメータの最適化には、さらなる検討が必要である。
統計
バックアзиムスと震央距離を10度間隔でビンに分割。
各ビンに割り当てられるインパルス応答の数は15~30の間でランダムに設定。
ノイズレベルは、P波到達後10秒間の二乗平均平方根(rms)振幅とP波到達前10秒間のrms振幅を比較して決定される信号対雑音比(SNR)を維持するように調整。
SNRは対数正規分布からランダムに選択。
地震計データの加法的ノイズは、最大SNRを2に制限。
デコンボリューションプロセスは、0.01のウォーターレベルパラメータと幅5のガウシアンフィルターを用いて正則化。
コヒーレントコード長(p)は200、ノイズコード長(m)は80に固定。
早期停止は最大30エポックで実装、学習率は0.0004を採用。
ノイズエンコーダの出力における最適なドロップアウト率は0.3に固定。