核心概念
DeepSeq2は、回路の構造、機能、シーケンシャルな振る舞いを分離して学習することで、従来の手法よりも正確かつ効率的にシーケンシャル回路の表現学習を行うことができるフレームワークである。
論文情報
Sadaf Khan, Zhengyuan Shi, Ziyang Zheng, Min Li, and Qiang Xu. 2025. DeepSeq2: Enhanced Sequential Circuit Learning with Disentangled Representations. In 30th Asia and South Pacific Design Automation Conference (ASPDAC ’25), January 20–23, 2025, Tokyo, Japan. ACM, New York, NY, USA, 7 pages. https://doi.org/10.1145/3658617.3697594
研究目的
本論文では、シーケンシャル回路の表現学習における従来手法の限界を克服し、より正確かつ効率的な学習を実現する新しいフレームワークDeepSeq2を提案する。
手法
DeepSeq2は、回路の構造、機能、シーケンシャルな振る舞いを3つの異なる埋め込み空間に分離して学習する。これにより、各側面の独自の特性を維持しながら、相互依存性を保持した、より詳細な表現が可能になる。さらに、DeepSeq2は、巡回的なシーケンシャルネットリストを効率的に処理するために設計された、特化したDAG-GNN(Directed Acyclic Graph Neural Network)アーキテクチャを採用している。
主な結果
DeepSeq2は、従来のシーケンシャル回路学習フレームワークであるDeepSeqと比較して、電力推定と信頼性解析のタスクにおいて、精度とランタイム効率の両面で優れたパフォーマンスを示した。
DeepSeq2は、大規模なテスト回路において、平均1.24%の電力推定誤差を達成し、DeepSeqの3.20%と比較して大幅な改善を示した。
信頼性解析タスクにおいて、DeepSeq2は平均0.17%の誤差を達成し、DeepSeqの0.37%と比較して54.05%の改善を示した。
結論
DeepSeq2は、シーケンシャル回路の表現学習において、従来の手法よりも優れた精度、効率性、汎用性を提供する。その分離表現学習アプローチと効率的なDAG-GNNアーキテクチャは、電力推定や信頼性解析などの下流タスクにおいて、正確で効率的な結果を得るために不可欠である。
意義
本研究は、EDA(Electronic Design Automation)分野における回路表現学習の進歩に大きく貢献するものである。DeepSeq2は、複雑なシーケンシャル回路の分析と最適化のための新しい道を切り開き、より効率的で信頼性の高い電子設計を可能にする可能性を秘めている。
限界と今後の研究
DeepSeq2は、組み合わせ回路の学習にDeepGate2を事前学習モデルとして活用しているため、DeepGate2のパフォーマンスに依存する可能性がある。
本研究では、電力推定と信頼性解析の2つの下流タスクに焦点を当てている。DeepSeq2の汎用性をさらに検証するために、他のEDAタスクにおける有効性を評価する必要がある。
今後の研究では、Transformerなどのより高度なグラフニューラルネットワークアーキテクチャをDeepSeq2に組み込むことで、時間相関の捕捉と時間依存データパターンの理解をさらに向上させることができる。
統計
DeepSeq2は、大規模なテスト回路において、平均1.24%の電力推定誤差を達成し、DeepSeqの3.20%と比較して大幅な改善を示した。
信頼性解析タスクにおいて、DeepSeq2は平均0.17%の誤差を達成し、DeepSeqの0.37%と比較して54.05%の改善を示した。
DeepSeq2は、ac97_ctrl回路において、5つの未知のワークロードで平均1.36%の電力推定誤差率を達成し、DeepSeqの2.57%よりも優れている。