薬剤師が率いる高血圧管理チーム：血圧コントロール改善の鍵となるか？

核心概念

薬剤師が率いる高血圧管理チームは、医師が率いるチームよりも血圧を有意に低下させる可能性があり、高血圧管理の改善に重要な役割を果たす可能性がある。

要約

米国および世界的に、高血圧のコントロールは大きな課題となっており、既存の取り組みは十分な成果を上げていません。WHOの報告によると、高血圧と診断されている成人のうち、治療を受けているのはわずか42％、血圧が適切にコントロールされているのはわずか21％に留まります。米国では、成人の約半数が高血圧を抱えていますが、血圧が適切にコントロールされているのはわずか22.5％です。

高血圧は、冠動脈疾患、心不全、脳卒中の主要なリスク因子です。米国心臓協会は、高血圧の罹患率は2020年の51.2％から2050年には61.0％に増加すると予測しており、この問題は悪化する一方です。

高血圧の管理には多くの要因が関与しますが、最近の研究では、高血圧管理チームを率いる専門家の種類が成功に影響を与える可能性があることが示唆されています。現在、ほとんどの血圧管理チームは、プライマリケアの医師が率いています。

しかし、Circulation誌に掲載された最近のメタアナリシスでは、薬剤師が率いるチームと地域保健従事者が率いるチームが、血圧の低下において最も大きな成果を上げています。これらのチームは、収縮期血圧をそれぞれ7.3 mmHgと7.1 mmHg低下させました。一方、看護師が率いるチームと医師が率いるチームでは、収縮期血圧の変化はそれぞれ-3 mmHgと-2.4 mmHgでした。

薬剤師が優れた成果を収めている理由として、服薬管理、副作用の評価、服薬アドヒアランスに関する患者とのコミュニケーションなど、血圧管理とコントロールが薬剤師の専門分野と密接に関連していることが挙げられます。

薬剤師が率いる血圧管理チームには、専門領域の対立や法改正の遅れなど、いくつかの障壁が存在します。しかし、専門家は、薬剤師による独立した処方が許可されれば、医師の診察を受けられない、または医師へのアクセスが困難な人々にとって有益であると主張しています。

高血圧の専門家は、チーム医療の重要性と、医師以外の専門家が適切なトレーニング、処方権限、特定の管理プロトコル、医師の監督の下で高血圧の薬物治療を提供できる可能性を強調しています。

地域保健従事者は、地域社会の文化的背景を理解しているため、血圧管理の取り組みにおいて重要な役割を果たすことができます。

高血圧のコントロール率の低さは深刻な問題であり、医師はしばしば、血圧管理において「臨床的または治療的慣性」に陥ることがあります。つまり、血圧値が明らかに示唆している場合でも、降圧薬の増量や追加を行わないことがあります。

高血圧の傾向を逆転させるには、医療における抜本的な変化、つまり、数十年にわたって同じ方法で物事を行ってきた機関、システム、個人の変化が必要です。

統計

世界的に、高血圧と診断されている成人のうち、治療を受けているのはわずか42％、血圧が適切にコントロールされているのはわずか21％。
米国では、成人の約半数（48％）が高血圧を抱えている。
米国で高血圧と診断された成人のうち、血圧が適切にコントロールされているのはわずか22.5％。
薬剤師が率いるチームは、収縮期血圧を7.3 mmHg低下させた。
地域保健従事者が率いるチームは、収縮期血圧を7.1 mmHg低下させた。
看護師が率いるチームは、収縮期血圧を3 mmHg低下させた。
医師が率いるチームは、収縮期血圧を2.4 mmHg低下させた。

引用

「私たちは、どの介入が有効かという点に関して、基本的に必要なすべての科学的証拠を持っています。しかし、それ と現実世界で実際に何が起こっているかとの間には大きな隔たりがあります。」
「薬剤師が最高の結果を出したことに驚きはしませんでした。なぜなら、その多くは薬の投与量を調整し、各患者に適切な種類の薬を見つけることに関係しているからです。」
「医師が血圧を最適化する薬剤師のような医療パートナーがいれば、患者は適切な薬を服用して血圧が正常化し、医師の診察を再び受けるようになります。これは完全にwin-winの関係だと思います。私たちはただ、その先入観を克服する必要があります。」
「高血圧のコントロール率は悲惨なものです。さらに憂慮すべきことは、それが低下していることです。それが緊急性を物語っています。それが、私たちが直面している危機です。私たちは、何か別のことをすることを真剣に検討しなければなりません。」

抽出されたキーインサイト

Should Pharmacists Lead BP Control Teams?

by Marcia Frell... 場所 www.medscape.com 10-28-2024

https://www.medscape.com/viewarticle/which-specialists-should-lead-bp-control-efforts-2024a1000jn7

深掘り質問

薬剤師が主導する高血圧管理体制を構築する上で、医療制度や報酬体系はどのように変わるべきか？

薬剤師が主導する高血圧管理体制を構築するには、日本の医療制度および報酬体系において、以下の様な変革が必要です。

薬剤師の業務範囲の拡大と独立性向上:

現状では、医師の処方箋なしに薬剤師が独自に処方変更や投薬量の調整を行うことはできません。薬剤師がより積極的に高血圧管理に介入するためには、一定の条件下での独立処方権限の付与や、特定の医薬品に関する処方権限の付与を検討する必要があります。
また、医師の診断に基づいた薬物療法管理計画書を作成し、その計画に基づいて薬剤師がより広範囲な薬物療法管理を実施できる体制を整えるべきです。

薬剤師への適切な報酬体系の確立:

現行の診療報酬体系では、薬剤師による高血圧管理に対する評価は十分ではありません。薬剤師が時間をかけて患者と向き合い、服薬指導や生活指導を行う体制を構築するためには、薬剤師による高血圧管理に対して適切な評価と報酬を付与する必要があります。
例えば、ハイリスク患者に対する服薬指導やアドヒアランス向上のための介入、遠隔医療技術を用いた服薬管理などに対して、診療報酬上の評価項目を設けることが考えられます。

多職種連携の推進と情報共有の促進:

薬剤師が効果的に高血圧管理を行うためには、医師や看護師など他の医療従事者との密接な連携が不可欠です。そのため、医療機関間や職種間における電子カルテの共有や、地域医療連携システムの構築など、円滑な情報共有を促進するための環境整備が必要です。
また、多職種連携の重要性を医療従事者間で共有し、チーム医療を実践するための研修や教育プログラムを充実させる必要があります。

これらの変革を実現するためには、厚生労働省、日本医師会、日本薬剤師会など関係機関が積極的に議論を重ね、合意形成を図っていくことが重要です。

薬剤師が高血圧管理の専門知識を高める一方で、医師は他の疾患への対応に集中することで、医療の質は向上するだろうか？

はい、薬剤師が高血圧管理の専門知識を高め、医師が他の疾患への対応に集中することで、医療の質は向上する可能性があります。

薬剤師の専門性向上: 薬剤師は、薬物動態学、薬力学、薬物治療学などの専門知識を有しており、特に薬物療法の専門家として、高血圧治療薬の作用機序、副作用、相互作用、服薬指導などを深く理解しています。この専門性を活かし、患者一人ひとりの病態や体質に合わせたきめ細やかな服薬指導、副作用管理、アドヒアランス向上支援を行うことで、高血圧の良好なコントロール、ひいては脳卒中や心筋梗塞などの合併症予防に貢献できます。
医師の負担軽減: 高血圧は、他の疾患と比較して、症状が自覚しにくく、長期的な管理が必要となるため、医師にとって大きな負担となっています。薬剤師が高血圧管理を積極的に担うことで、医師はより専門性の高い疾患の診断や治療、緊急性の高い患者の対応などに集中できるようになり、結果として医療全体の質向上に繋がると考えられます。
チーム医療の推進: 薬剤師と医師がそれぞれの専門性を活かし、相互に連携・協力することで、より質の高い医療を提供することができます。例えば、薬剤師は患者の服薬状況や副作用の有無などを医師にフィードバックし、医師はそれに基づいて治療方針を修正するといった連携が考えられます。
しかし、医療の質向上のためには、薬剤師と医師間の適切な役割分担と連携体制の構築が不可欠です。そのためには、相互の専門性を尊重し、積極的にコミュニケーションを図ることが重要となります。

医療従事者の専門性と役割分担がますます細分化していく中で、患者中心の医療を提供するためには、どのようなチーム医療のあり方が求められるのだろうか？

医療従事者の専門性と役割分担が細分化する中で、患者中心の医療を提供するためには、以下の様なチーム医療のあり方が求められます。

患者情報を共有する統合的なプラットフォームの構築:

それぞれの専門分野で得られた患者情報を一元的に集約・共有できるシステムが必要です。電子カルテの標準化や地域医療連携システムの強化などが考えられます。

多職種が対等な立場で連携できる体制:

専門職種による縦割りの意識を廃し、患者にとって最善の医療を提供するという共通目標のもと、対等な立場で意見交換や情報共有ができる体制が必要です。

顔の見える関係構築とコミュニケーションの活性化:

定期的なカンファレンスや合同研修などを実施し、職種間の相互理解を深め、信頼関係を築くことが重要です。

患者・家族を含めたチーム医療:

医療従事者だけでなく、患者や家族も医療チームの一員と捉え、治療方針の決定や情報共有に積極的に参加してもらうことが重要です。

地域包括ケアシステムとの連携強化:

退院後も切れ目なく医療・介護サービスを受けられるよう、病院と地域の医療機関、介護施設などが連携し、患者を支える体制が必要です。

これらの要素を実現することで、患者中心の医療、すなわち、患者の価値観やニーズを尊重し、患者が安心して医療を受けられる体制を構築できると考えられます。
特に、高血圧のような慢性疾患を抱える患者にとって、継続的な服薬管理や生活習慣の改善指導は非常に重要です。そのため、医師、薬剤師、看護師、栄養士、理学療法士などが連携し、それぞれの専門性を活かしながら、患者一人ひとりに最適な医療を提供していくことが求められます。