核心概念
本稿では、ボソンサンプリング検証において、サンプル空間の充填挙動を分析することで、真のボソンサンプリングと古典的なシミュレーションを区別できる新しい手法を提案している。
要約
本稿は、量子コンピューティングにおけるボソンサンプリングの検証問題に関する研究論文である。
研究目的
- 量子計算上の優位性を実証する上で重要な課題である、ボソンサンプリングの検証において、真のボソンサンプリングと古典的なシミュレーションを区別する、効率的かつ効果的な新しいプロトコルを開発すること。
手法
- ボソンサンプリング後のサンプル空間におけるデータ点間の距離に基づいて、データ点をノード、データ点間の関係性をエッジとした「波動関数ネットワーク(WFN)」を構築する。
- 収集したサンプル数に対するWFNの次数分布の平均値⟨μ⟩と標準偏差⟨σ⟩の依存性を分析する。
- ⟨μ⟩と⟨σ⟩のサンプル数依存性をフィッティングするパラメータを用いて、真のボソンサンプリングと古典的なシミュレーションを区別する。
主な結果
- サンプル空間の充填に伴うWFNの進化を分析することで、真のボソンサンプリングと、均一分布、区別可能な粒子サンプリング、平均場サンプリングといった古典的なシミュレーションを区別できることが示された。
- 提案手法は、最大20個の光子を400モードの干渉計に注入するシステムに対して有効であることが確認された。
結論
- 本研究で提案されたサンプル空間充填分析に基づく検証プロトコルは、ボソンサンプリング検証において有効な手段となりうる。
- 本手法は、計算量が少なく、必要なサンプル数も少ないため、大規模なボソンサンプリング実験の検証にも適用可能である。
意義
- 本研究は、ボソンサンプリング検証のための新しいアプローチを提供し、量子計算上の優位性の実証に向けた重要な一歩となる。
- WFNを用いたサンプル空間分析は、他の量子状態の検証にも応用できる可能性がある。
限界と今後の研究
- 本研究では、固定された干渉計行列を用いたシミュレーションデータを使用しており、未知の干渉計行列を用いた場合の検証精度については更なる検討が必要である。
- より多くのサンプル数や異なるシステムサイズを用いた検証、また、平均場サンプリングなどの他の古典的シミュレーションとの比較検討も必要である。
統計
5個の光子を25モードの干渉計に注入するシステムでは、118,755通りの可能な結果が存在する。
20個の光子を400モードの干渉計に注入するシステムに対して、最大18,000個のサンプルを用いて検証を行った。