核心概念
生体外拡散MRIは、組織微細構造や脳の結合性を調べるための強力なツールですが、その利点を最大限に活用し、結果の解釈を確実にするためには、組織の準備から画像取得、処理、解析に至るまで、注意深い検討とベストプラクティスの適用が不可欠です。
要約
生体外拡散MRI:データ処理、顕微鏡との比較、およびトラクトグラフィー
この論文は、前臨床拡散MRIに関する3部構成の提言と考察の締めくくりとなるパート3です。パート1では小動物のin vivo拡散MRIに焦点を当て、パート2では生体外組織における拡散MRIのベストプラクティスについて解説しました。
本稿では、生体外組織の拡散MRIにおける画像の前処理、拡散の定量化とモデルフィッティング、組織学との比較方法、生体外ファイバートラクトグラフィーなど、生体外MRI取得後のあらゆる側面について解説し、推奨事項を示します。最後に、コード共有やデータ共有についての見解を述べ、小動物や生体外イメージングに特化したオープンソースソフトウェアやデータベースを紹介します。
生体外拡散MRIは、組織微細構造や脳の結合性を調べる上で、in vivoイメージングに比べていくつかの利点があります。
利点:
長いスキャン時間: より高いSNRと空間分解能を実現できます。
アーチファクトの軽減: 生体における動きや生理学的活動がないため、画像の歪みが軽減されます。
高度な拡散強調: より洗練された拡散強調を用いることで、組織の微細構造をより詳細に調べることができます。
組織学的データとの直接比較: 方法論的検証のために、拡散データを組織学的データと直接比較することができます。
課題:
組織の準備: 組織の固定や準備は、拡散MRIの結果に影響を与える可能性があり、注意深い検討が必要です。
画像取得と処理: 生体外イメージングには、in vivoイメージングとは異なる画像取得と処理のパラメータが必要です。
結果の解釈: 生体外拡散MRIの結果は、組織の固定やスキャンパラメータの影響を受ける可能性があるため、注意深く解釈する必要があります。
前処理とは、拡散フィッティング(テンソル、生体物理モデルなど)の前に実施する処理を指し、データ変換(例:DICOMからNIfTI)、ノイズ除去、アーチファクト補正などが含まれます。
前処理の手順:
データのインポートと再構成: ベンダー固有の形式のデータを、一般的な前処理ソフトウェアと互換性のあるNIfTIまたはDICOMデータに変換します。
脳マスクの生成: 画像の背景から脳をデジタル的に抽出します。
ノイズ除去: 拡散強調画像の熱雑音を低減します。
ギブスリンギング補正: 高コントラストの組織界面に現れるアーチファクトを補正します。
磁化率歪み、渦電流、サンプルモーションの補正: 逆位相エンコードスキャンを用いて歪み場を推定し、すべてのアーチファクトを同時に補正します。
ricianバイアス補正: マグニチュードデータに存在する非ゼロのricianフロアを減算することで、拡散信号の減衰を補正します。
信号ドリフト補正: スキャナーの時間的不安定性によって生じる信号ドリフトを、複数回のb = 0画像を取得することで補正します。