核心概念
本研究では、IVIMを用いたMRIが、脳卒中における虚血性ペナンブラの局所脳血流を定量化し、梗塞の進展を予測する有効なツールとなりうることを示唆している。
要約
書誌情報
Liu MM, Saadat N, et al. A Method for Imaging the Ischemic Penumbra with MRI using IVIM. (掲載予定)
研究目的
本研究は、急性虚血性脳卒中における、IVIMを用いたMRIによる虚血性ペナンブラの画像化法を評価することを目的とした。具体的には、IVIMが、局所脳血流(qCBF)、梗塞体積、虚血性ペナンブラを定量化し、従来の造影剤を用いたDSC-MRIと比較して、梗塞進展の予測に有用かどうかを検討した。
方法
- イヌの永久 MCAO モデルを用いて、8 頭のイヌを対象に実験を行った。
- MCAO 後 2.5 時間で IVIM および DSC イメージングを取得した。
- IVIM 画像は、qCBF、水輸送時間(WTT)、拡散などのパラメトリック画像を作成するために、独自に開発したソフトウェアを使用して後処理された。
- DSC灌流画像パラメータ(Tmax、qCBF、平均通過時間(MTT)、平均拡散係数(MD)を含む)は、遅延および分散補正された「局所AIF」を用いて算出した。
- 最終梗塞量は、MCAO 後 4 時間で測定した。
主な結果
- 拡散陰性 MCA 領域における早期(MCAO 後 2.5 時間)の DSC qCBF と IVIM qCBF は強く相関した(傾き = 1.00、p = 0.01、R2 = 0.69、Lin's CCC = 0.71)。
- DSC qCBF と IVIM qCBF はどちらも、最終梗塞量と負の相関を示した(それぞれ R2 = 0.78、R2 = 0.61)。
- DSC qCBF および IVIM qCBF から 2.5 時間で測定した低灌流の体積はどちらも、良好な感度と相関性で最終梗塞量を予測した(それぞれ傾き = 2.08、R2 = 0.67、傾き = 2.50、R2 = 0.68)。
- IVIM PWI/DWI 比は梗塞の増大と相関し(R2 = 0.70)、WTT は MTT と相関した(傾き = 0.82、R2 = 0.60)。
結論
- IVIM qCBF は局所AIF DSC qCBF と強く相関し、IVIM PWI/DWI は梗塞の増大と強く相関した。
- 閉塞後早期に得られた DSC および IVIM の定量的灌流画像はどちらも、最終梗塞量を予測することができ、IVIM の同時 PWI/DWI 比は梗塞の増大を予測した。
- IVIM は、急性虚血性脳卒中における脳血流、水輸送時間、および灌流拡散ミスマッチを定量化する有望な非侵襲的技術である。
意義
本研究は、IVIM が急性虚血性脳卒中の評価に有用なツールとなりうることを示唆している。IVIM は、造影剤を必要とせずに局所脳血流を定量化できるため、特に造影剤の使用が禁忌である患者や、経時的モニタリングが必要な場合に有用であると考えられる。
限界と今後の研究
- 本研究は、少数の動物を対象とした予備的なものであるため、結果を確認するためには、より大規模な研究が必要である。
- IVIM は、CSF や間質液の混入の影響を受けやすいため、これらの影響を最小限に抑えるためのさらなる技術開発が必要である。
- IVIM を臨床現場でルーチンに使用するためには、標準化された取得および解析プロトコルを確立する必要がある。
統計
DSC qCBF と IVIM qCBF は強く相関した (傾き = 1.00, p = 0.01, R2 = 0.69, Lin's CCC = 0.71)。
DSC qCBF は最終梗塞量と負の相関を示した (R2 = 0.78)。
IVIM qCBF は最終梗塞量と負の相関を示した (R2 = 0.61)。
DSC qCBF から測定した 2.5 時間後の低灌流の体積は、最終梗塞量と相関した (傾き = 2.08, R2 = 0.67)。
IVIM qCBF から測定した 2.5 時間後の低灌流の体積は、最終梗塞量と相関した (傾き = 2.50, R2 = 0.68)。
IVIM PWI/DWI 比は梗塞の増大と相関した (R2 = 0.70)。
WTT は MTT と相関した (傾き = 0.82, R2 = 0.60)。