核心概念
従来のMAV設計では不可能であった、あらゆる方向への移動能力(全方向移動性)を備えながら、アクチュエータ数を最小限に抑え、エネルギー効率の高い新型MAVの設計コンセプトが提案されています。
要約
本稿では、あらゆる姿勢で内部力を発生させることなく、最小限のアクチュエータで全方向移動が可能な新型マルチローター航空機(MAV)の設計コンセプトが提案されています。
提案されたMAV設計の特徴
- 受動関節で結合された複数のリンクと、各リンクに搭載されたプロペラで構成されるマルチボディ構造を採用。
- メインボディの自由度(DoF)と同数のアクチュエータで全方向移動性を実現。
- 単方向の正推力プロペラのみを使用し、定常状態での内部力の発生を抑制。
2種類の設計タイプ
本稿では、上記の設計コンセプトに基づいた2種類の設計タイプが検討されています。
タイプ1
- メインボディに、それぞれプロペラを備えたN個のリンクが、受動関節を介して接続されている構造。
- 各リンクの重心は、対応する関節からプロペラとは反対側に一定距離cの位置にある。
タイプ2
- タイプ1とは異なり、少なくとも1つのリンク(リンクN)が、モーメント作動関節を介してメインボディに接続されている構造。
- リンクNの重心は、対応する関節のできるだけ近くに配置され、慣性結合を最小限に抑えている。
- モーメント作動関節は、サーボモーターを直接使用する方式(オプション1)と、カップルドロータープロペラモジュールを使用する方式(オプション2)の2種類がある。
各設計タイプの解析
- オイラー・ラグランジュ法を用いてシステムの運動方程式を導出し、全方向移動性に関する解析が行われています。
- その結果、タイプ1は全方向移動性を満たさない一方、タイプ2は全方向移動性を満たすことが示されています。
制御設計
- 入力/出力フィードバック線形化に基づく制御戦略を採用し、メインボディの目標姿勢(xd, yd, ϕd)の安定化問題に取り組んでいます。
- タイプ1は静的にも動的にもI/Oフィードバック線形化不可能である一方、タイプ2は安定なゼロダイナミクスを持つ動的I/Oフィードバック線形化可能なシステムに属することが示されています。
シミュレーション
- MATLAB/Simulinkを用いたシミュレーションにより、タイプ2の車両のI/Oフィードバック線形化制御性能が検証されています。
- シミュレーション結果から、提案された制御戦略により、様々な初期状態から目標姿勢への安定した収束が実現することが確認されています。
結論
本稿では、最小限のアクチュエータ数、単方向推力プロペラ、定常状態での内部力発生なしで全方向移動可能な新型MAVの設計コンセプトが提案され、その有効性が理論およびシミュレーションによって示されました。今後の研究として、3次元空間への拡張、ロバストな制御設計、実験による検証などが挙げられています。
統計
車両の総質量: 10 kg
メインボディの重心から関節までの長さ (a): 0.5 m
関節から各リンクの重心までの距離 (c): 0.5 m
カップルドロータープロペラ間の距離の半分 (a11): 0.1 m
メインボディのz軸周りの慣性モーメント (Ib): 0.0095 kg·m²
各リンクのz軸周りの慣性モーメント (Ip): 0.002 kg·m²
引用
"To the best of our knowledge, this is the first time that a concept possessing all these control theoretic properties together is presented."
"If translated into the real world, all these properties would have the potential to result in omnidirectional MAV’s that are cheaper, easier to build and maintain, and consume significantly less energy."