核心概念
本稿では、農耕車両の滑らかで効率的な経路追従を実現するために、経路追従型ハイブリッドA*プランナーと階層型モデル予測制御(MPC)コントローラーを組み合わせた新しい手法を提案する。
要約
経路追従型ハイブリッドA*と階層型MPCを用いた自律走行農耕車両の経路計画
参考文献: Lu, M., Gao, H., Dai, H., Lei, Q., & Liu, C. (2024). Path Tracking Hybrid A* For Autonomous Agricultural Vehicles. arXiv preprint arXiv:2411.14086.
研究目的: 自律走行農耕車両が農地で基準経路を走行する際、特に畝間走行時に、曲率制約と車体衝突回避に加えて、基準経路からの逸脱を最小限に抑える経路計画手法を提案する。
手法:
経路追従型ハイブリッドA*: 非ホロノミック制約と車両サイズに基づく衝突回避を満たし、逸脱度を最小限に抑えるための新しいコスト関数とヒューリスティック関数を考案したハイブリッドA*アルゴリズムを提案する。このアルゴリズムは、オフラインでの経路平滑化だけでなく、予期せぬ障害物に遭遇した場合のリアルタイム調整にも対応できる。
階層型MPC: 平滑化された軌道を安全に追従するために、線形化MPCで解かれた初期解と、その初期解周辺の非線形局所調整を用いた階層型MPCを提案する。
主な結果:
提案手法は、既存のBスプライン法と比較して、基準経路への近接性と曲率制約の遵守の両方において優れていることをシミュレーションで確認した。
提案する経路追従型ハイブリッドA*は、オフラインでの経路平滑化だけでなく、予期せぬ障害物に遭遇した場合のリアルタイムな経路再計画にも有効であることを確認した。
階層型MPCは、生成された滑らかな軌道を安全かつ確実に追従できることをシミュレーションで確認した。
意義: 本研究は、農耕車両の自動化に向けた重要なステップであり、農作業の効率化、作物の損傷の軽減、精密農業の実現に貢献するものである。
限界と今後の研究:
本研究では、車両の速度や加速度の制約は考慮していない。
今後は、圃場全体の経路計画や複数台の車両による協調作業など、より複雑なシナリオへの適用を検討する必要がある。
統計
提案アルゴリズムは、既存のBスプライン法と比較して、すべての圃場シーンにおいて平均偏差度が小さい。
Bスプライン法では、曲率制限を超えるサンプル点の割合が20%近くになるのに対し、経路追従型ハイブリッドA*では0%を維持している。
MPCを用いて、提案手法で平滑化した経路、Bスプライン法で平滑化した経路、生の基準経路の3種類の経路を追従させた結果、提案手法で平滑化した経路が最も追従性能が高く、すべての基準経路において安全かつ確実に追従できた。
1~3個の障害物がある場合でも、提案する計画・制御システムは、高い成功率、計画速度、制御速度を有している。