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µTRISTANにおけるALPレプトンフレーバー違反の検証


核心概念
µTRISTAN実験は、レプトンフレーバーを破るALPの結合を検証し、低エネルギーLFVプロセスやレプトン磁気双極子モーメントの測定を補完する可能性を秘めている。
要約

本論文は、提案されているµTRISTANプロジェクトにおいて、レプトンフレーバーを破る(LFV)相互作用を持つアクシオン様粒子(ALP)の探索能力を探求している。LFVは、広範囲のALPモデルにおいて一般的な予測であり、標準模型(SM)のバックグラウンドの影響を受けない明確な兆候を示す。

µTRISTANは、J-PARCミューオンg-2実験で開発された陽ミューオンビームの冷却および集束技術を活用した高エネルギー衝突型加速器である。µ+ビームは最大1 TeVまで加速され、KEKのTRISTANリングから供給される30 GeVのe-ビームと衝突させることができる。これにより、重心(c.m.)エネルギー√s≃346 GeV、積分ルミノシティL = 1 ab-1のµ+e-“ヒッグスファクトリー”が実現する。さらに、この加速器は√s = 2 TeVのµ+µ+衝突型加速器としても運用できるため、既存技術で実現可能な高エネルギーレプトン“発見マシン”となる。

論文では、まず、レプトンとALPの相互作用を記述する一般的な有効ラグランジアンをレビューし、ALPの崩壊長について議論している。次に、e-µ+およびµ+µ+衝突において、LFV ALPと相互作用する可能性のあるいくつかのプロセスを検証している。これらのプロセスには、tチャンネルまたはsチャンネルにおけるALP交換によって誘起されるLFVプロセスと、LFV相互作用を通じて生成される終状態ALPを持つプロセスが含まれる。

これらのプロセスの断面積を計算した結果、µTRISTANで検証可能なALP生成モードとして、e-µ+ → aγ、e-µ+ → e-τ+a、µ+µ+ → µ+τ+a、e-µ+ → τ-µ+aが挙げられている。

論文では、これらのプロセスのシミュレーション結果を示し、µTRISTANで達成可能なLFV ALP結合に対する感度を計算している。さらに、これらの結果を、低エネルギーLFVプロセス、特にLFV µおよびτ崩壊からの現在および将来の制限と比較している。

その結果、µTRISTANは、ma≳1 GeVの質量を持つ、電子とミューオンとのLFV相互作用のみを持つ重いALPに対して、Mu-Mu振動探索を補完する可能性があることがわかった。また、µTRISTANは、maがO(100) GeVの質量範囲にある場合にのみ、LFC相互作用とLFV相互作用の両方を備えたALPモデルに感度を持つ可能性がある。

結論として、µTRISTANは、LFV ALP結合を検証し、低エネルギーLFVプロセスやレプトン磁気双極子モーメントの測定を補完する可能性を秘めている。

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統計
µTRISTANは、重心(c.m.)エネルギー√s≃346 GeV、積分ルミノシティL = 1 ab-1のµ+e-“ヒッグスファクトリー”を実現できる。 µTRISTANは、√s = 2 TeVのµ+µ+衝突型加速器としても運用できる。 MACS実験は、Mu−Mu振動確率にPMu Mu < 8.3×10−11(90% CL)という制限を与えている。 提案されているMACE実験では、ミューオン振動の制限を3桁向上させ、PMu Mu < 7 × 10−14にすることが期待されている。 MEG実験で設定された現在の90% CL制限は、BR(µ →eγ) < 4.2 × 10−13である。 現在進行中のMEG II実験では、BR(µ →eγ) < 6 × 10−14の制限が期待されている。
引用

抽出されたキーインサイト

by Lorenzo Cali... 場所 arxiv.org 11-21-2024

https://arxiv.org/pdf/2406.13234.pdf
Probing ALP Lepton Flavour Violation at $\mu$TRISTAN

深掘り質問

µTRISTAN実験の結果、LFV ALPの存在が示唆された場合、どのような理論的影響が考えられるか?

もしµTRISTAN実験でLFV ALPの存在が示唆されれば、素粒子物理学の標準模型を超える新しい物理の存在を示す決定的な証拠となり、素粒子物理学に革命をもたらす可能性があります。具体的には、以下のような重要な理論的影響が考えられます。 新しいフレーバー対称性とそれを破るメカニズムの発見: LFV ALPは、レプトンフレーバーの破れを説明する新しい対称性と、その対称性を特定のエネルギーレベルで破るメカニズムの存在を示唆しています。これは、標準模型では説明できない現象であり、宇宙初期の進化や物質生成の謎を解き明かす鍵となる可能性があります。 新しい粒子や相互作用の存在の示唆: LFV ALPは、標準模型に含まれない未知の粒子や相互作用の存在を示唆している可能性があります。例えば、ALPがフレーバーを破る相互作用をするレプトンと相互作用する、より基本的な粒子から構成されている可能性も考えられます。 ニュートリノ質量生成メカニズムへの示唆: LFV ALPは、ニュートリノが質量を持つメカニズムを解明する上でも重要な手がかりを与えると考えられます。例えば、シーソー機構のようなニュートリノ質量生成モデルでは、右巻きニュートリノなどの新しい粒子と、レプトンフレーバーを破る相互作用が導入されます。LFV ALPはこのようなモデルと関連付けられる可能性があります。 宇宙論への影響: ALPは暗黒物質の候補としても考えられており、LFV ALPの発見は、宇宙の進化や構造形成における暗黒物質の役割を理解する上でも重要な意味を持ちます。

µTRISTAN実験では、ALPの質量と結合定数の範囲に制約があるが、他の実験手法と組み合わせることで、どこまで探索範囲を広げることができるか?

µTRISTAN実験は、GeVスケールの質量を持つALPの探索に優れていますが、探索できる質量と結合定数の範囲は限定的です。しかし、他の実験手法と組み合わせることで、ALP探索の範囲を大幅に広げることができます。 低エネルギー実験との連携: MEG IIやMu3eなどの低エネルギー実験は、ミュー粒子の稀崩壊を通じて、µTRISTANでは到達できない軽いALPの探索に感度があります。これらの実験とµTRISTAN実験の結果を組み合わせることで、広い質量範囲をカバーするALP探索が可能になります。 大型ハドロン衝突型加速器 (LHC) 実験との連携: LHC実験は、TeVスケールのエネルギーで陽子と陽子を衝突させ、標準模型を超える新しい粒子を探索しています。ALPが他の粒子と相互作用する場合、LHC実験でもALPの生成と崩壊を観測できる可能性があります。µTRISTAN実験とLHC実験の結果を組み合わせることで、ALPの質量や結合定数、他の粒子との相互作用に関するより詳細な情報を得ることができます。 強度フロンティア実験との連携: J-PARCやFermilabなどの加速器施設で行われている強度フロンティア実験は、大強度のビームを用いて、標準模型では起こりにくい稀な現象を探索しています。これらの実験では、ALPと光子や電子との相互作用を探索することで、µTRISTAN実験では到達できない結合定数の領域を探査できます。 宇宙観測との連携: ALPは宇宙初期に大量に生成された可能性があり、宇宙マイクロ波背景放射や銀河団の観測を通して、ALPの質量や相互作用に関する情報を得ることができます。µTRISTAN実験と宇宙観測の結果を組み合わせることで、ALPの性質を多角的に検証し、宇宙の進化におけるALPの役割を解明することができます。

ALPの探索は、宇宙の暗黒物質の謎を解明する上で、どのような役割を果たすと考えられるか?

ALPは、その性質上、暗黒物質の候補として非常に有力視されています。ALPの探索は、暗黒物質の謎を解明する上で、以下の様な重要な役割を果たすと考えられています。 暗黒物質の正体解明: ALPが暗黒物質の主成分である場合、その質量や相互作用は宇宙の進化に大きな影響を与えているはずです。ALPの探索を通じて、その質量や相互作用を特定することで、暗黒物質の正体に迫ることができます。 暗黒物質と標準模型との関係解明: ALPは、標準模型を超える物理と密接に関係している可能性があります。ALPの探索は、暗黒物質と標準模型との関係を明らかにする鍵となり、宇宙の物質の起源や進化に関する理解を深めることに繋がります。 初期宇宙の理解: ALPは、インフレーション期などの宇宙初期に生成された可能性があります。ALPの探索は、初期宇宙の物理を探るための窓となり、宇宙の起源や進化に関する謎を解明する手がかりを与えてくれると期待されています。 特に、LFV ALPは、暗黒物質と通常の物質との間に、レプトンフレーバーを破る相互作用を媒介することで、新しいタイプの暗黒物質-標準模型粒子相互作用の可能性を示唆しています。これは、従来の暗黒物質探索実験では観測が難しかった相互作用であり、LFV ALPの探索は、暗黒物質の謎に迫る新たな道を切り開く可能性を秘めていると言えるでしょう。
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