この論文は、初期宇宙におけるバリオン非対称性、つまり物質と反物質の非対称性の生成に関する新しい理論を提案しています。この理論の中心となるのは、クォーク型のフェルミオンと結合したマヨラナフェルミオンという仮説上の粒子です。
この論文では、標準模型を超えた新しい電磁気的に中性のディラックフェルミオンχを導入し、これが次元6の4フェルミオンベクトル-ベクトル相互作用を介して、電荷+2/3のアップ型クォーク様フェルミオンUと、電荷-1/3の2つのダウン型クォーク様フェルミオンDと結合すると仮定しています。この相互作用により、マヨラナフェルミオンχはバリオン数を持ち、その崩壊と散乱過程を通じてバリオン非対称性を生成することができます。
この論文では、初期宇宙の膨張する高温環境下でのχとバリオン数の密度を支配するボルツマン方程式を立て、数値的に解いています。その結果、適切な結合を選択することで、初期宇宙におけるバリオン対称状態から出発して、現在観測されているバリオン非対称性を幅広い質量スケールで説明できることが示されました。
特に重要な発見として、この理論では散乱過程がバリオン非対称性の生成において重要な役割を果たすことが挙げられます。これは、従来の崩壊過程中心のバリオン数生成理論とは異なる点であり、今後の実験による検証が期待されます。
この論文は、マヨラナフェルミオンとクォークの結合という新しい理論的枠組みが、初期宇宙におけるバリオン非対称性の生成を説明できる可能性を示しました。今後、この理論をさらに発展させ、LHCなどの地上実験で検証可能な具体的な予言を導き出すことが期待されます。
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