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インサイト - Scientific Computing - # レプトジェネシス

サブGeVアクシオン様粒子を用いた自発的レプトジェネシス


核心概念
従来のワインバーグ演算子を用いた自発的レプトジェネシスモデルは、高温および重いアクシオン様粒子(ALP)を必要とするため、低温シナリオや軽いALPでは現実的ではありません。本稿では、慣性ヒッグス二重項を用いた新しいレプト数非保存演算子を導入することで、低温および軽いALPでも自発的レプトジェネシスが可能になることを示します。
要約

本稿では、初期宇宙における動的なCPT対称性の破れと熱平衡状態にあるレプトン数非保存相互作用を用いて、軽いアクシオン様粒子(ALP)がバリオン数非対称性(BAU)の生成にどのように寄与するかを探求しています。

従来の自発的レプトジェネシスモデルでは、ニュートリノ質量生成の原因となるワインバーグ演算子を用いて、レプトン数非保存相互作用を実現していました。しかし、このプロセスが熱平衡状態を保つには、宇宙の初期段階における非常に高い温度(T ≳ 10^13 GeV)が必要となります。そのため、低い再加熱温度や軽いALPといった実験的に興味深いシナリオでは、このメカニズムは効果を発揮できません。

本稿では、標準模型(SM)ヒッグス粒子の代わりに慣性ヒッグス二重項(IHD)を用いた、ワインバーグ演算子に類似した新しいレプトン数非保存演算子を導入することで、この問題を解決する新しい枠組みを提案しています。この新しい演算子はニュートリノ質量生成とは無関係であるため、レプトン数非保存相互作用のデカップリング温度を大幅に低下させることができます。

この修正により、初期ALP速度がゼロの場合でも、低い再加熱温度(TRH)でフリーズインを介して正しいBAUを生成し、同時に軽いALP(mϕ ∼ 5 × 10^4 GeV)を説明することが可能になります。さらに、大きな初期ALP速度を考慮すると、フリーズアウトによるBAU生成によってALPの質量を〜O(10) keV-MeVまで下げることができ、ALP探索の観点からも興味深いものとなります。

さらに、この枠組みでは、IHDが潜在的な暗黒物質候補としても機能するため、未解決の問題との関連性を持ちながら、構成の最小限化を実現しています。

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統計
T H d ∼10^13 GeV: ワインバーグ演算子によるレプトン数非保存相互作用が熱平衡状態を保つために必要な宇宙初期の温度。 mϕ ≳10^9 GeV: 従来のモデルで必要とされるALPの質量。 T Φ d ≃4 × 10^6 GeV: IHDを用いた新しい演算子によるレプトン数非保存相互作用のデカップリング温度。 mϕ ∼5 × 10^4 GeV: 新しいモデルでフリーズインを介して正しいBAUを生成するために必要なALPの質量。 mϕ ∼O(10) keV-MeV: 大きな初期ALP速度を考慮した場合に、フリーズアウトによるBAU生成で可能なALPの質量。
引用

抽出されたキーインサイト

by Arghyajit Da... 場所 arxiv.org 11-14-2024

https://arxiv.org/pdf/2405.07003.pdf
Spontaneous Leptogenesis with sub-GeV Axion Like Particles

深掘り質問

この新しい枠組みは、他の未解決の宇宙論的問題、例えば宇宙の物質と反物質の非対称性の起源を説明できるだろうか?

この枠組みは、宇宙のバリオン非対称性の起源を説明するために開発されたものであり、これは宇宙における物質と反物質の非対称性の問題と密接に関係しています。しかし、この枠組みが他の未解決の宇宙論的問題に直接適用できるかどうかは、現時点では不明です。 例えば、ダークマターの正体については、この研究ではIHDが候補として挙げられていますが、それがダークマターの全てを説明できるかどうかは更なる研究が必要です。また、インフレーションのメカニズムや宇宙の加速膨張を引き起こすダークエネルギー問題についても、この枠組みから直接的な説明を与えることは難しいと考えられます。 ただし、この枠組みは、軽いALPとIHDを用いることで、従来の枠組みよりも低いエネルギースケールでレプトジェネシスを実現できる可能性を示唆しています。これは、初期宇宙における物理過程を探る上で重要な知見であり、将来的には他の宇宙論的問題への新たなアプローチに繋がる可能性も秘めています。

IHDとSMヒッグス粒子との相互作用が、レプトジェネシスのダイナミクスや生成されるBAUにどのような影響を与えるか?

IHDとSMヒッグス粒子との相互作用は、主に「ポータル相互作用」と呼ばれる形式で表され、その結合定数はλで表されます。この相互作用は、レプトジェネシスのダイナミクスおよび生成されるBAUに以下の影響を与えます。 IHDの熱平衡: ポータル相互作用は、初期宇宙においてIHDをSM粒子と熱平衡状態に保つ役割を果たします。これにより、IHDがレプトジェネシスに必要な非平衡過程に関与することが可能になります。 レプトン数非保存相互作用のデカップリング温度: IHDを含むレプトン数非保存相互作用 (ℓLℓLΦΦ/Λ) のデカップリング温度 TΦd は、ポータル相互作用の結合定数λには直接依存しません。これは、TΦd が主にΛによって決まるためです。 ALPの運動方程式への影響: ポータル相互作用は、ALPの運動方程式にバックリアクション項として寄与する可能性があります。しかし、この研究で考慮されているようなfΦ ≳ TRH の場合には、このバックリアクション項は無視できます。 要約すると、IHDとSMヒッグス粒子との相互作用は、IHDを熱平衡状態に保ち、レプトジェネシスに必要な条件を満たすために重要な役割を果たします。ただし、ポータル相互作用の結合定数λが、レプトジェネシスのデカップリング温度や生成されるBAUに直接的な影響を与えることはありません。

この研究で提案された軽いALPは、将来の実験でどのように検出できるだろうか?

この研究で提案された軽いALPは、その質量範囲や相互作用の強さから、様々な実験を通して検出できる可能性があります。以下に、具体的な実験とその探索方法を挙げます。 ビームダンプ実験: GeV以下の質量を持つALPは、ビームダンプ実験で探索可能です。高エネルギーの電子ビームを標的に照射することで、ALPが生成される可能性があり、その崩壊生成物を検出することで、ALPの存在を確認できます。 代表的な実験: FASER, SHiP 固定標的実験: 軽いALPは、固定標的実験においても探索可能です。高強度の陽子ビームを固定標的に照射することで、ALPが生成され、その崩壊生成物である光子や電子・陽電子対を検出します。 代表的な実験: NA62, KOTO 低エネルギーコライダー実験: Belle IIなどの低エネルギーコライダー実験では、B中間子の崩壊過程などを精密に調べることで、軽いALPの探索が可能です。 代表的な実験: Belle II ヘリオスコープ実験: 太陽内部で生成されるALPを探索するヘリオスコープ実験も有効です。強力な磁場を用いることで、ALPを光子に変換し、その光子を検出します。 代表的な実験: CAST, IAXO これらの実験に加えて、将来計画されているより高感度な実験、例えば、高輝度LHCにおける専用検出器などを用いることで、より広範囲のALPパラメータ領域を探索することが可能になります。
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