核心概念
MeerKAT電波干渉計を用いて、セクスタンスA&B矮小銀河でパルサーと過渡現象の探索が行われましたが、既知のパルサーの予想される電波輝度よりも高い感度にもかかわらず、パルサーは発見されませんでした。しかし、背景FRB 20210924Dが発見され、その大きな分散尺度から、これらの矮小銀河とは無関係である可能性が高いことが示唆されました。
タイトル:セクスタンスA&B銀河におけるTRAPUMパルサーと過渡現象の探索、および背景FRB 20210924Dの発見
ジャーナル:MNRAS
出版年:2024年
著者:E. Carli, L. Levin, B. W. Stappers, E. D. Barr, R. P. Breton, S. Buchner, M. Burgay, M. Kramer, P. V. Padmanabh, A. Possenti, V. Venkatraman Krishnan, S. S. Sridhar, J. D. Turner
研究目的
本研究は、MeerKAT電波干渉計を用いて、近傍の矮小銀河であるセクスタンスA&Bにパルサーと過渡現象が存在するかどうかを調査することを目的としました。
方法
南アフリカにあるMeerKAT電波干渉計を用いて、セクスタンスA&Bを観測しました。
観測はLバンド(856–1712 MHz)で3回行われ、各観測時間は2時間でした。
データは、TRAPUM(TRansients And PUlsars with MeerKAT)コラボレーションの標準的な検索パイプラインを用いて処理されました。
パルサーの候補を探索するために、周期的な信号と単一パルスの両方を探索しました。
主な結果
セクスタンスA&Bからはパルサーは発見されませんでした。
1400 MHzにおける電波擬似輝度の上限は7.9±0.4 Jy kpc2と計算されました。これは、既知の最も明るい電波パルサーの輝度の30%高い値です。
セクスタンスAの3回目の観測で、分散尺度(DM)737 pc cm−3の高速電波バースト(FRB 20210924D)が検出されました。
FRB 20210924Dの大きなDMとその信号対雑音比がMeerKATの広視野インコヒーレントビームで最も強かったことから、これは背景イベントであり、矮小銀河とは関連していないと考えられています。
結論
セクスタンスA&Bにおけるパルサーの非検出は、これらの銀河におけるパルサーの個体数が天の川銀河よりも少ないか、観測された方向にビームを向けたパルサーが存在しないことを示唆しています。
FRB 20210924Dの検出は、MeerKATが背景の過渡現象を発見する能力を示しており、将来の観測でより多くのFRBが発見される可能性を示唆しています。
意義
本研究は、近傍の銀河におけるパルサーと過渡現象の探索に重要な制約を与え、MeerKATのような高感度電波望遠鏡を用いた将来の研究の基礎を提供します。
制限と今後の研究
パルサーの非検出は、セクスタンスA&Bにパルサーが存在しないことを決定的に証明するものではありません。より感度の高い観測や異なる周波数での観測が必要となる可能性があります。
FRB 20210924Dの起源をよりよく理解するためには、さらなる観測が必要です。
統計
セクスタンスAとBは地球から約140万パーセク離れています。
これらの銀河の星形成率は2–8 ×10−3太陽質量/年です。
セクスタンスAとBの金属量は、天の川銀河よりも低くなっています。
本調査では、1400 MHzで4.2±0.2μJyの電波流束密度限界を達成しました。
FRB 20210924Dの分散尺度は737 pc cm−3と測定されました。