本論文は、超伝導体(SC)ストリップとフェリ磁性体(FM)層からなるハイブリッド構造における、調整可能なマグノン結晶の実現について論じています。
マグノン結晶(MC)は、空間的に周期的に変化する磁気パラメータを持つ人工磁性材料です。MCは、スピン波(SW)の分散関係を調整し、その局在化と伝播に影響を与えることができるため、マグノニクス分野において大きな注目を集めています。従来のMCは、磁性材料のパターン化によって作製されてきましたが、本論文では、外部磁場に応答してSCストリップに発生する渦電流を利用して、均一な磁性層にMCを誘起する新しいアプローチを提案しています。
提案された構造は、ガリウムドープイットリウム鉄ガーネット(Ga:YIG)FM膜と、マイスナー状態にあるニオブ(Nb)SCストリップのシーケンスで構成されています。SCとFMのサブシステムは、10 nmの非磁性スペーサーによって電気的に絶縁されています。外部磁場を膜面に垂直に印加すると、マイスナー効果によりSCストリップに渦電流が発生し、FM層内に周期的な磁場プロファイルが誘起されます。この周期的な磁場プロファイルが、均一なFM層を一次元MCに変換する役割を果たします。
論文では、SCストリップによって生成される磁場プロファイルと、FM層におけるSWスペクトルを、半解析計算と有限要素法(FEM)計算を用いて解析しています。その結果、SCストリップ間の距離や外部磁場の強度を調整することで、MCの特性、すなわちSWスペクトルのバンドギャップの幅や位置を制御できることが明らかになりました。
本研究は、オンデマンドでMCを誘起し、その特性を外部磁場によって制御できることを示しています。この新しいアプローチは、再構成可能なマグノニクスデバイスや回路の実現に向けて、新たな道を切り開く可能性を秘めています。
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