核心概念
本稿では、従来の磁気プローブでは困難であった、完全補償された反強磁性体における磁気秩序、時間反転対称性の破れ、界面非対称性をプローブするための効果的なツールとして、キャビティ増強円偏光二色性分光法を提案する。
要約
本研究は、ファンデルワールス反強磁性体であるFePS3における磁気秩序と対称性の破れを、キャビティ増強円偏光二色性(CD)分光法を用いて調査した。FePS3と基板の間に非対称な界面を構築することで、小さな非ゼロの自然円偏光二色性(NCD)を誘起することに成功した。このNCDは、界面スピン軌道磁場(B0)に由来し、FePS3のジグザグ反強磁性秩序と強く結合していることがわかった。
FePS3は、常温では常磁性状態にあり、反転対称性と時間反転対称性の両方を維持している。外部磁場を印加すると、時間反転対称性が破れ、非ゼロの磁気円偏光二色性(MCD)が発生する。時間反転対称性の破れの程度は、MCDの強度に比例する。厚い試料は、より大きなキャビティ増強効果を持つため、より明瞭なMCDを示す。そこで、厚さ1500 nmのFePS3を用いて、300 Kにおける磁場依存CDスペクトルを調べた。
常磁性状態のFePS3では、外部磁場によってMCDが誘起されるが、反強磁性状態では、CD、つまりエネルギー分裂(ΔE)は、3 T以下の外部磁場にはほとんど依存しないことがわかった。これは、FePS3のスピンフロップ磁場が35 Tであるため、3 Tの外部磁場ではスピンを回転させるには不十分だからである。そのため、FePS3のスピンはジグザグ反強磁性秩序を維持し、スピンと構造の反転非対称性の組み合わせと結合したCDは、3 T以下の外部磁場に対して変化しない。
これらの結果は、非対称界面を構築することで、完全補償された反強磁性体材料の磁気特性を調べるための効果的な手段としてCDを用いることができることを示している。
統計
FePS3のスピンフロップ磁場は35 Tである。
厚さ1500 nmのFePS3を用いて、300 Kにおける磁場依存CDスペクトルを測定した。
反強磁性状態では、CD、つまりエネルギー分裂(ΔE)は、3 T以下の外部磁場にはほとんど依存しない。
引用
"By constructing an asymmetric interface (FePS3/SiO2/Si substrate) that breaks the interface inversion symmetry, we successfully generate and detect the NCD at 0 T"
"Our results suggest that the cavity-enhanced CD technique is an effective probe to detect the broken time-reversal symmetry, inversion asymmetry-induced interfacial spin-orbit magnetic field, and hidden interface state."
"Our results demonstrate that constructing an asymmetry interface enables CD to be an effective mean for investigating the magnetic properties of fully compensated collinear AFM materials, including tracking the magnetic phase transition temperature and the spin-flop field."