核心概念
多数の2次元金属層からなる系において、層間の励起子凝縮によって層間の電子数保存則に対応する対称性が自発的に破れると、3次元的な非フェルミ液体状態が出現する可能性がある。
要約
ファンデルワールス多層構造におけるサブシステム対称性の破れによる非フェルミ液体の形成
本論文は、ファンデルワールス多層構造における層間励起子凝縮によって層間の電子数保存則に対応する対称性が自発的に破れることで、どのように3次元的な非フェルミ液体状態が出現するのかを理論的に解明することを目的とする。
本研究では、まず、各層で電子数が保存する多層金属系に対して、層間の電子間相互作用を考慮したミクロなハミルトニアンを構築する。次に、平均場近似を用いて、層間励起子秩序パラメータが有限となる、対称性が破れた金属状態を記述する。そして、得られた平均場ハミルトニアンに、秩序パラメータの揺らぎをGoldstoneモードとして導入し、フェルミ粒子とGoldstoneモード間の結合を記述する有効模型を導出する。最後に、この有効模型を用いて、ランダム位相近似の範囲内で、フェルミ粒子自己エネルギー、比熱、電気伝導率などの物理量を計算し、非フェルミ液体状態の特徴を明らかにする。