核心概念
高圧下におけるLa₃Ni₂O₇の超伝導特性を理解するため、二層二軌道モデルをプラケット梯子上で数値的に研究し、電荷秩序、スピン相関、ペアリング相関における準長距離秩序の存在を示唆した。
要約
研究概要
本論文は、高圧下で発見された高温超伝導体La₃Ni₂O₇の微視的なメカニズムを探求するために、二層二軌道モデルを用いた数値的研究を行っている。計算上の制約から、真の二次元格子ではなくプラケット梯子構造を対象としているが、得られた知見はLa₃Ni₂O₇の特性解明に重要な洞察を提供する。
モデルと手法
- La₃Ni₂O₇の電子構造を記述するため、Ni原子の3d軌道(3dx²-y²と3dz²)を考慮した二層二軌道モデルを採用。
- モデルのハミルトニアンには、軌道内・軌道間ホッピング、ハバード斥力、層間反強磁性交換相互作用などの項を含む。
- 大規模密度行列繰り込み群(DMRG)法を用いて、プラケット梯子構造におけるモデルを数値的に解く。
結果
- 3dx²-y²軌道電子の電荷密度分布は、波長2格子単位の電荷密度波(CDW)構造を示す。
- 3dz²軌道電子の電荷密度は、バルクにおいてほぼ均一である。
- スピン密度分布は、3dx²-y²と3dz²軌道の両方で、Néel型のスピン密度波(SDW)パターンを示す。
- スピン単重項超伝導ペア-ペア相関関数を計算した結果、3dz²-3dz²と3dx²-y²-3dx²-y²の両方のチャネルで、符号が周期的に振動する長距離の代数的減衰が見られる。
考察
- 3dx²-y²軌道で観測されたCDWは、約1/4フィリングの系における2kF密度振動モードと整合する。
- SDWパターンは、層間AFM結合の影響を反映しており、3dz²軌道では層間原子サイト間で符号が反転している。
- ペアリング相関の符号振動は、系内にペア密度波が存在する可能性を示唆しており、s±波やd波とは異なるペアリング対称性を示唆している。
結論
本研究は、プラケット梯子構造におけるLa₃Ni₂O₇の二層二軌道モデルに対して包括的な数値的研究を提供するものである。準長距離秩序を示すCDW、SDW、ペア密度波の存在は、この物質における多軌道性と電子相関の複雑な相互作用を浮き彫りにするものである。得られた結果は、La₃Ni₂O₇の電荷、スピン、ペアリング特性のさらなる解明に向けた基盤となるものである。
統計
3dx²-y²軌道電子の電荷密度波(CDW)の波長は2格子単位。
3dx²-y²軌道のスピン密度減衰の指数は0.44(1)。
3dz²軌道のスピン密度減衰の指数は0.31(2)。
3dz²-3dz²チャネルのペアリング相関の減衰指数は2.6(3)。
水平方向の3dx²-y²-3dx²-y²チャネルのペアリング相関の減衰指数は1.3(3)。
垂直方向の3dx²-y²-3dx²-y²チャネルのペアリング相関の減衰指数は2.2(1)。