本論文は、時間分解クーロン爆発イメージングを用いて、ヘリウムナノ液滴上に吸着したアルカリ二量体の振動波束における時間依存的な核間距離分布P(R, t)を決定できることを示した研究論文である。
フェムト秒レーザーパルスの出現により、振動波束(振動固有状態のコヒーレントな重ね合わせ)を作成し、リアルタイムで振動運動を観測することが可能になった。さらに、超高速構造敏感法の導入により、特定の振動運動に関連する核間距離と角度の時間発展、場合によっては核間波動関数の時間発展を測定することも可能になった。このような研究で採用されている主な技術は、十分に短い(フェムト秒)光子または電子のパルスを用いた時間分解回折、レーザー誘起電子回折、時間分解クーロン爆発イメージング、X線吸収である。
本研究では、ヘリウム液滴の表面に存在する最も単純な分子系の1つであるアルカリ原子二量体の基本的な振動運動を探求する。本研究の主な目的は、時間分解クーロン爆発イメージングにより、結合長の分布を時間の関数として決定できることを示すことである。
カリウムまたはルビジウム原子をドープしたヘリウムナノ液滴ビームを生成し、速度マップイメージング(VMI)分光計に導入する。ポンプパルス(λ = 1.30 µm)を照射してアルカリ二量体に振動波束を誘起し、プローブパルス(λ = 800 nm)を遅延させて照射することで、多光子吸収を介して二量体を一対のアルカリイオンAk+にクーロン爆発させる。フラグメントイオンの速度の2次元投影を2次元イメージング検出器で記録し、得られた速度画像から運動エネルギー分布P(Ekin)を決定する。最後に、適切なヤコビアンを用いたP(Ekin)の確率分布変換により、核間距離分布P(R)を取得する。
K2とRb2の両方において、P(R, t)は、それぞれの観測時間300 psと100 psの間、周期的な振動構造を示した。振動構造は、Rの時間依存平均値⟨R⟩(t)に反映されている。⟨R⟩(t)のフーリエ変換から、波束は主に振動基底状態と最初の励起振動状態から構成されていることが示され、数値シミュレーションと一致した。K2の場合、振幅が0.035 Åから0.020 Åに徐々に減衰しながら、180以上の振動周期に対応する300 ps 동안 振動が観測された。時間分解スペクトル解析を用いて、振幅の減衰時間が~260 psであることがわかった。この減少は、振動する二量体と液滴との間の弱い結合に起因すると考えられる。
本研究では、時間分解クーロン爆発イメージングを用いることで、ヘリウムナノ液滴上に吸着したアルカリ二量体の振動波束における時間依存的な核間距離分布を決定できることを示した。得られた結果は、数値シミュレーションと良く一致しており、本手法の有効性が示された。
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