核心概念
本稿では、光格子に捕捉したBaOH分子を用いて、これまで以上の精度で電子の電気双極子モーメント(eEDM)を測定する実験方法を提案する。
要約
光格子中の多原子分子を用いた電子の電気双極子モーメント測定の可能性
本稿は、光格子に捕捉した¹³⁸BaOH分子を用いて電子の電気双極子モーメント(eEDM)を高精度で測定する実験計画を提案する研究論文である。
本研究の目的は、CP対称性の破れを検証するために、これまで以上の精度でeEDMを測定することである。eEDMは標準模型を超える物理の存在を示唆する可能性があり、その測定は素粒子物理学の未解決問題に迫る上で重要である。
本研究では、¹³⁸BaOH分子を光格子に捕捉し、そのスピン歳差運動を高精度で測定することでeEDMを検出する。BaOH分子はレーザー冷却が可能であり、光格子に捕捉することで長いコヒーレンス時間が期待できるため、高精度な測定に適している。
本稿では、実験装置の概念設計、測定精度の見積もり、系統誤差の評価などが詳細に議論されている。特に、光格子による捕捉、スピン歳差運動の検出、磁場や電場の制御など、実験の主要な要素について詳細な検討が行われている。