核心概念
本論文では、共変的光フロントクォークモデルを用いて、Bc中間子のηc(1S, 2S, 3S)、ψ(1S, 2S, 3S)、およびX(3872)への半レプトン崩壊を分析し、分岐比、縦偏極率、前方後方非対称性などの物理量を計算し、レプトンフレーバー普遍性の検証やRJ/ψアノマリーに関する考察を行っている。
要約
Bc中間子の半レプトン崩壊に関する研究論文の概要
参考文献: Sun, Z. J., Wang, S. Y., Zhang, Z. Q., Yang, Y. Y., & Zhang, Z. Y. (2024). Semileptonic $B_c$ meson decays to S-wave charmonia and X(3872) within the covariant light-front approach. arXiv preprint arXiv:2308.03114v3.
研究目的: 共変的光フロントクォークモデル(CLFQM)を用いて、Bc中間子のηc(1S, 2S, 3S)、ψ(1S, 2S, 3S)、およびX(3872)への半レプトン崩壊を研究し、分岐比、縦偏極率、前方後方非対称性などの物理量を計算すること。
手法:
- ハドロンの内部構造を記述するために、現象論的なガウス型波動関数を採用。
- CLFQMの枠組み内で、遷移フォームファクターを計算。
- ヘリシティー振幅をフォームファクターを介して組み合わせることで、半レプトン崩壊の微分崩壊幅を算出。
- 分岐比、縦偏極率、前方後方非対称性などの物理量を計算。
主要な結果:
- Bc中間子からηc(1S, 2S, 3S)、ψ(1S, 2S, 3S)、およびX(3872)への半レプトン崩壊の分岐比を計算し、他の理論計算と比較。
- レプトンフレーバー普遍性を検証するために、分岐比の比R_X (X = ηc(1S, 2S, 3S), ψ(1S, 2S, 3S))を計算。
- 縦偏極率fLと前方後方非対称性A_FBを計算し、RJ/ψアノマリーに関する考察を行った。
結論:
- 本研究で得られた分岐比の予測値は、将来のLHCb実験で検証可能である。
- Rψ(2S,3S)とRηc(1S,2S,3S)の測定値と標準模型の予測値とのずれが検出されれば、レプトンフレーバー普遍性の問題がさらに浮き彫りになる可能性がある。
- 縦偏極率fLと前方後方非対称性A_FBは、新しい物理を探求するための重要な観測量となる可能性がある。
今後の研究:
- より高次の放射補正や、ハドロン遷移フォームファクターのより精密な計算を取り入れることで、予測精度を向上させることができる。
- Bc中間子の他の崩壊過程を研究し、標準模型の検証や新しい物理の探索を進める。
統計
LHCbコラボレーションは、2017年に半レプトンの分岐比の比率RJ/ψ|expを測定した。
RJ/ψ exp = Br (B+ c →J/ψτ +ντ) / Br (B+ c →J/ψµ+νµ) = 0.71 ± 0.17 ± 0.18。
これは、既存の標準模型の予測範囲である0.24 ≤RJ/ψ ≤0.28を2σ上回る。
モデルに依存しない制約は、0.20 ≤RJ/ψ ≤0.39である。
Rηc = Br (B+ c →ηcτ +ντ) / Br (B+ c →ηcµ+νµ) = 0.29 ± 0.02。
これは、他の理論的な結果のほとんどと一致しており、0.25 ≤Rηc ≤ 0.35の範囲にある。
モデルに依存しない予測は、0.29 ± 0.05である。
これらの半レプトンBc崩壊の分岐比は10の-6乗よりも大きく、将来の高輝度LHC(HL-LHC)や高エネルギーLHC(HE-LHC)実験で測定可能である。
引用
"In 2017, the ratio of the semileptonic branching fractions RJ/ψ|exp was measured by the LHCb Collaboration [13] , RJ/ψ exp = Br (B+ c →J/ψτ +ντ) / Br (B+ c →J/ψµ+νµ) = 0.71 ± 0.17 ± 0.18, (1) which lies within 2σ above the range of existing SM predictions [14, 15]."
"It was considered as one of the most fascinating puzzles in flavor physics in recent years."