核心概念
制御される双極子ボーズ・アインシュタイン凝縮体(BEC)アレイを用いて、ターゲット双極子BECの密度を軸方向に閉じ込め、操作できる。
要約
概要
本論文は、互いに空間的に離れた複数の双極子ボーズ・アインシュタイン凝縮体(BEC)からなる系における、凝縮体間の双極子-双極子相互作用の影響を検証したものである。特に、長距離性と異方性を持つ双極子-双極子相互作用を利用することで、制御された双極子BECを用いて、ターゲットとなる双極子BECの密度を軸方向に閉じ込め、操作できることを示している。
実験設定
- 複数の空間的に離れた双極子BECからなる系を扱う。
- ターゲットBECは軸方向に閉じ込められていない準一次元トラップに閉じ込められ、制御BECは三次元的に閉じ込められている。
- 各BECは、質量mとz軸方向に整列した磁気双極子モーメントdを持つボソンから構成される。
- 系は、結合非局所グロス・ピタエフスキー方程式(NLGPE)を用いて記述される。
研究結果
- 軸方向の閉じ込め: 制御BECは、長距離異方性を持つ双極子-双極子相互作用を介して、ターゲットBECに軸方向の閉じ込め効果を与える。
- 密度操作:
- 単一の制御BECを用いることで、ターゲットBECに二重ピーク構造を誘起できる。
- 2つの制御BECを用いると、制御BEC間の距離を変えることで、ターゲットBECの基底状態は3ピーク構造から4ピーク構造へと構造転移を起こす。
- 複数の制御BECを周期的に配置すると、ターゲットBECに有効的な周期ポテンシャルが誘起され、制御BEC間の距離に応じて異なる単一および二重ピークの周期構造が現れる。
- コヒーレンスの制御: 制御BEC間の距離を調整することで、ターゲットBECの密度ピーク間の原子移動やコヒーレンスを制御できる。
結論
本研究は、双極子-双極子相互作用を利用して、空間的に離れた双極子BECの量子状態を操作できることを示している。これは、極性分子やリュードベリ原子などのハイブリッド系における量子状態エンジニアリングの可能性を示唆するものである。
統計
原子数は、クロム(52Cr)、エルビウム(168Er)、ジスプロシウム(162Dy)などの最新の双極子BECで実現可能な値に設定されている。
コントロールBECのトラップアスペクト比λは、0.1、0.33、1などの値が用いられている。
コントロールBEC間の距離z0は、12l⊥から150l⊥までの範囲で変化させている。
コントラストCは、隣接する密度ピーク間の密度差を定量化するために用いられている。
引用
"The anisotropic and long-range nature of the dipole-dipole interactions (DDIs) led to a rich physics in dipolar quantum gases."
"In this paper, motivated by the recent experimental development, we analyze the effect of inter-condensate dipole-dipole interactions in a set of well-separated condensates."
"In particular, we show that the ground state density of a target dipolar BEC can be engineered using an array of strongly confined control dipolar BECs."