核心概念
銀河系薄円盤における主系列星の動径金属量勾配は、星の動径軌道変動の影響を考慮しても、銀河系の内側ほど金属量が高く、外側ほど金属量が低いという明瞭な勾配を示している。
要約
GALAH DR3とGaia DR3データを用いた銀河系薄円盤の化学進化の研究
本論文は、銀河進化における基本的な要素である、銀河系薄円盤の動径金属量勾配に焦点を当てています。この研究では、GALAH DR3の分光データとGaia DR3のアストロメトリデータを用いて、化学的に選別された薄円盤の主系列星サンプルを構築し、その化学組成と軌道運動を詳細に分析しています。
銀河系薄円盤における主系列星の動径金属量勾配を、ガイディング半径と遡及初期軌道半径を用いて算出する。
星の動径軌道変動が金属量勾配に与える影響を評価する。
観測された金属量勾配と、銀河系の化学進化モデルから予測される勾配を比較する。
分光データ:GALAH DR3 (Buder et al. 2021)
星の数:235,202
データ項目:大気パラメータ (有効温度、表面重力、金属量、微視的乱流速度)、27元素の組成比、視線速度
アストロメトリデータ:Gaia DR3 (Gaia Collaboration, Vallenari, et al. 2023)
データ項目:赤道座標、固有運動、視差、年齢
主系列星の選定:Bilir et al. (2020) の手法に基づき、金属量ごとに作成したHR図上に、PARSEC質量進化トラックから得られたゼロ歳主系列 (ZAMS) と終末期主系列 (TAMS) の関係を重ね、ZAMSとTAMSの間に位置する星を選択
距離の推定:Gaia DR3の視差データを使用
銀河ポピュレーションの分類:[α/Fe] 対 [Fe/H] 図上で、Plevne et al. (2020) によって定義された分離線を用いて、低α系列星 (薄円盤) と高α系列星 (厚円盤またはハロー) を分類
空間速度と軌道要素の計算:galpyライブラリ (Bovy, 2015) を使用し、MWPOTENTIAL2014モデルを採用
遡及初期軌道半径 (𝑅teo) の算出:星の現在の位置、速度、年齢を初期条件として、軸対称銀河ポテンシャルの下で軌道を過去に遡って積分