核心概念
大規模な複素行列の固有値と固有ベクトルを近似するために、ブロック部分空間展開を用いた反復アルゴリズムを提案し、その最適性と収束性を理論的に解析するとともに、計算可能なアルゴリズムを導出し、数値実験によりその有効性を検証しています。
要約
ブロック部分空間展開を用いた固有値・固有ベクトル近似
本論文は、大規模な複素行列Aの固有値と固有ベクトルを近似するための、ブロック部分空間展開を用いた新しい反復アルゴリズムを提案しています。このアルゴリズムは、従来のブロックKrylov部分空間法と比較して、計算コストを抑えつつ、高精度な近似を実現できる可能性を秘めています。
論文ではまず、最適なブロック部分空間展開問題を定義し、その解を導出しています。具体的には、与えられた部分空間Vに対して、V+A(W0)が目標部分空間Xに最も近いような部分空間W0を探索します。ここで、Aは対象行列、XはAの固有ベクトルで張られる部分空間、Vは初期探索部分空間を表します。
論文では、この最適なW0が存在することを証明し、その具体的な構成方法を示しています。さらに、この最適な部分空間展開を用いた反復アルゴリズムを提案し、その収束性を理論的に解析しています。特に、Aがエルミート行列の場合、提案アルゴリズムによって生成される部分空間列が、Xに指数関数的に収束することを示しています。