核心概念
本稿では、赤外線から極端紫外線までの光の電場を、マルチペタヘルツの検出帯域幅で測定するための、全光学的な新しい概念を提示する。
要約
本稿は、光の電場を赤外線から極端紫外線までの超広帯域で測定する、新しい全光学的手法を提案する研究論文である。
研究の背景
- 光と物質の相互作用において、光の電場の時空間的な変化は物質の運動を引き起こす。
- この物質の応答は時間と空間で変化し、相互作用する場に刻印される。
- この情報を検出することで、基礎となる物理過程にアクセスできる。
- この概念は、電場分解計測法(FRM)と呼ばれ、近年、光励起固体における電子正孔プラズマからの光学応答の形成、超高速磁性、光と物質のエネルギー移動の測定に利用されている。
- 従来の分光法とは異なり、FRMは、光と物質の相互作用中の物質のダイナミクスを、サブサイクルの時間分解能と非常に高い感度で追跡することを可能にする。
既存手法の課題
- 従来のFRM手法は、非光ゲートと全光ゲートの2つのカテゴリーに大別される。
- 非光ゲートは、ゲート時間が測定周波数の半サイクルに匹敵するようになると帯域幅が急速に低下するという欠点がある。
- また、非光ゲートは光学カメラの使用を妨げ、感度とダイナミックレンジが全光学的手法に比べて劣っている。
- 全光ゲートは、非線形光放射によって生成される。
- これらのゲートは、非常に高い感度とダイナミックレンジで、時間的および空間的に電場にアクセスすることを可能にする。
- しかし、非線形光と物質の相互作用の次数が低いため、検出帯域幅が制限される。
提案手法
- 本稿では、従来のFRM手法の帯域幅の制限を克服する、赤外線から極端紫外線までの光の電場を測定するための概念を提示する。
- この概念は、高次非線形プロセス(カスケード非線形性、ブルネル放射、注入電流など)を光ゲートとして採用することに依存している。
- この概念は、非光ゲート(時間的閉じ込め)と光ゲート(高感度)の利点を組み合わせたものである。
研究成果
- 本稿では、媒体中の光の非線形伝搬、光励起、プラズマダイナミクスを考慮した理論モデルを開発した。
- このモデルは、実験結果と非常によく一致することがわかった。
- この概念の検出帯域幅は、マルチペタヘルツ領域まで拡張できることがわかった。
- 同時に、検出の全光ヘテロダイン性により、高い感度が維持される。
結論
- 本稿では、極端紫外線を含む、非常に広いスペクトル範囲にわたる光の電場を測定するための、新しい全光学的な概念を紹介した。
- このアプローチは、従来の電気光サンプリングやGHOSTスキームと同様に、ヘテロダイン検出に光ゲートを採用している。
- 対照的に、本稿では、カスケード非線形性、ブルネル放射、注入電流などの高次非線形プロセスを採用している。
- 時間的に制限された強電場プロセスによって放射される光を、光ゲートとして使用できることを示した。
- この閉じ込めにより、赤外線から極端紫外線までの範囲の電場をサンプリングするのに十分な、広いスペクトル応答が得られる。
- ヘテロダイン検出により、全光学的手法に典型的な高い感度が維持される。
- 本稿では、数値モデルを開発し、オクターブに及ぶ帯域幅を持つ最先端のサブ3 fs光パルスを測定する実験に対してベンチマークを行った。
- 実験的および理論的に、弱電場領域における狭帯域応答から、強電場領域における極端に広い帯域幅の応答への明確な遷移を観察した。
- スペクトル応答の広帯域化は、カスケード非線形性、ブルネル放射、注入電流などの高次非線形プロセスが関与することによって達成されることを確認した。
- マルチペタヘルツのスペクトル応答により、高調波発生や化学反応中の電荷移動など、赤外線から極端紫外線までの広いスペクトル範囲にわたる電場分解研究が可能になる。
- さらに、全光学的であるという性質は、将来の画像処理アプリケーションに利用できる。
統計
測定された信号の全体的な強度は、弱電場領域と比較して約3桁増加した。
信号のダイナミックレンジは約40デシベルであった。
0.65 PHz付近の積分信号は、サンプリングパルス電場の4乗に比例して増加した(IS ∝ E^4_S)。
0.45 PHzでは、サンプリングパルス電場が約1.1 V/˚Aまでは、信号は6乗に比例して増加した(IS ∝ E^6_S)。
サンプリングパルス電場が1.1 V/˚Aを超えると、E^6_Sからのずれが観察された。
シミュレーションによると、ブルネル放射と注入電流の寄与は約0.3%であった。
20 nmのSiO2とダイヤモンドのサンプルを用いたシミュレーションでは、検出帯域幅は最大約5 PHz(波長60 nm)まで拡張できることが示された。
引用
"To date, both non-optical and all-optical approaches struggle to access frequencies above 1 PHz (∼300 nm wavelength), curtailing physical processes which can be studied."
"We present a concept for measuring the electric field of light spanning from infrared to extreme ultraviolet, which overcomes the bandwidth limitation of all state-of-the-art FRM methods."
"Our study paves the way for investigations based on broadband electric-field measurement up to extreme ultraviolet."