核心概念
本稿では、宇宙論的シミュレーションUchuuを用いて、バリオン分布を考慮した高精度なX線・熱的Sunyaev-Zel'dovich効果マップを作成し、銀河団の形状と向きが観測されるX線光度に与える影響を定量化しました。
要約
Uchuu Lightconeシミュレーションを用いたバリオン分布マップの作成
本稿は、宇宙論的シミュレーションUchuu Lightconeを用いて、バリオン分布を考慮したX線・熱的Sunyaev-Zel'dovich効果(tSZ)マップを作成した研究について記述しています。
近年、X線、マイクロ波、可視光における大規模な多波長銀河団サーベイが進行および計画されており、宇宙論の理解を深めることが期待されています。
これらのサーベイでは、膨大な数の銀河団や銀河群が観測されるため、統計誤差の大幅な減少が見込まれます。
しかし、これらのサーベイの成功には、物質の分布と進化に影響を与える系統的不確実性を正確にモデル化し、軽減することが不可欠です。
ダークマターハローの質量と観測可能な特性(X線光度やtSZ信号など)を結びつける質量-観測量スケーリング関係の正確な推定は、銀河団の観測宇宙論において信頼性の高い制約を得るために不可欠です。
しかし、これらの関係は、平均関係を中心としたばらつきを考慮していないため、物理システムの複雑さを完全には捉えられていません。
本研究では、バリオン分布を考慮した高精度なX線・tSZマップを作成し、銀河団の形状と向きが観測されるX線光度に与える影響を定量化することを目的としました。