核心概念
K3[2]型多様体の対合を持つ場合の不変量の境界挙動を、同変解析的トーションを用いて解析し、その代数性を示すとともに、Yoshikawa不変量との関連性を明らかにする。
本論文は、対合を持つK3[2]型多様体の同変解析的トーションを調べた、3部構成の論文のうちの2番目の論文である。
研究背景
K3[2]型多様体は、K3曲面の2点のヒルベルトスキームに変形同値な既約正則シンプレクティック4様体である。
K3[2]型多様体とその反正則対合の変形型は、 admissible sublattice M と Kähler-type chamber K の組 (M, K) によって決定される (Joumaah [25])。
Yoshikawaは、2-elementary K3曲面に対して、同変解析的トーションを用いて不変量を導入し、それがモジュライ空間上の保型形式のPeterssonノルムとして表現されることを示した ([29], [45], [48], [49])。
研究内容
本論文では、K3[2]型多様体 X とその反正則対合 ι の組 (X, ι) に対して、[23] で導入された不変量 τ(X, ι) をより詳細に研究する。
τ(X, ι) は、 X の正規化された体積1を持つ ι-不変Ricci-flat Kähler計量に関する、余接束の同変解析的トーション、 Xι の解析的トーション、 Xι の体積、および H1(Xι, Z) の L2-計量に関する余体積の積として定義される。
モジュライ空間上の τ(X, ι) の境界挙動を理解するために、同変Quillen計量とL2-計量の特異性を解析する。
特異ファイバーが単純正規交叉特異点を持つ場合の、射影多様体の退化に対する同変解析的トーションの漸近挙動を調べる。
特定の場合において、 τ(X, ι) が Yoshikawa の正則トーション不変量と一致することを証明する。
結果
モジュライ空間の判別式軌跡の近くにおける不変量の特異性の代数性を示す (Theorem 0.1)。
特定の場合において、不変量が2-elementary K3曲面のYoshikawa不変量と一致することを証明する (Theorem 0.2, 0.3)。
結論
本論文の結果は、K3[2]型多様体の反正則対合による商のクレパント解消として得られるCalabi-Yau 4様体のBCOV不変量を計算する際に役立つ。