本論文は、局所的および非局所的な高速電波バースト(FRB)を用いてハッブル定数を測定する研究について述べています。ハッブル定数は、宇宙の現在の膨張率を表す宇宙論における基本的なパラメータです。
宇宙論の標準モデルであるΛCDMモデルでは、ハッブル定数は重要なパラメータの一つです。しかし、ハッブル定数の測定値には、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を用いた初期宇宙の観測に基づく値と、セファイド変光星やIa型超新星を用いた後期宇宙の観測に基づく値との間に、4σを超える有意な差が存在します。これは「ハッブルテンション」として知られており、現代宇宙論における未解決問題の一つとなっています。
本研究では、FRBの観測データとIllustrisTNGシミュレーションから得られた銀河間物質(IGM)およびホスト銀河の分散尺度(DM)の確率分布を用いて、ハッブル定数を測定しています。
まず、69個の局所的なFRBのデータを用いて、MCMC法によりハッブル定数を測定しました。次に、CHIME望遠鏡で観測された527個の非局所的なFRBのデータを用いて、擬似赤方偏移を推定し、ハッブル定数を測定しました。擬似赤方偏移は、観測されたDMと宇宙論モデルから、FRBまでの距離を仮定した際に得られる赤方偏移です。
69個の局所的なFRBのデータから得られたハッブル定数は、70.41+2.28−2.34 km s−1Mpc−1でした。これは、CMBに基づく値とセファイド変光星に基づく値の中間の値であり、FRBがハッブル定数を測定するための独立な手法となりうることを示唆しています。
527個の非局所的なFRBのデータから得られたハッブル定数は、擬似赤方偏移の算出方法によって、69.89+0.66−0.67 km s−1Mpc−1または68.81+0.68−0.68 km s−1Mpc−1でした。
本研究の結果は、FRBがハッブル定数を測定するための有望なツールであることを示しています。今後、より多くのFRBが観測され、そのホスト銀河が特定されることで、ハッブル定数の測定精度が向上し、ハッブルテンションの解決に貢献することが期待されます。
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