核心概念
本稿では、強光電離によって誘起される窒素イオンの電子-振動ダイナミクスとコヒーレンスを、過渡X線吸収分光法を用いて理論的に調査し、励起状態A2Πuにおける有意な集団の存在を確認した。
要約
強光電離誘起窒素イオンの電子-振動ダイナミクスとコヒーレンスの理論的研究:アト秒X線過渡吸収分光法
本稿は、KleineらによってPhysical Review Letters誌に掲載された論文「Electronic state population dynamics upon ultrafast strong field ionization and fragmentation of molecular nitrogen」に基づき、強光電離によって誘起される窒素イオン(N2+)の電子-振動ダイナミクスとコヒーレンスを、過渡X線吸収分光法を用いて理論的に調査した研究についてまとめたものである。
本研究は、強光電離(SFI)によって生成されたN2+の電子状態の動的挙動を、アト秒時間分解能を持つX線過渡吸収分光法(ATAS)を用いて調査することを目的とした。
本研究では、SFIとそれに続くレーザー誘起結合(LIC)によるN2+の電子-振動ダイナミクスを記述するために、電離-結合モデルを開発した。このモデルを用いて、時間依存密度行列を計算し、そこから過渡吸収スペクトルを導出した。計算では、ポンプパルスとして800 nm、4.5 × 10^14 W/cm2の赤外レーザーパルスを、プローブパルスとして393 eVを中心とした10^11 W/cm2のX線パルスを用いた。