本論文は、最小限のSO(10)大統一理論におけるゲージ結合の統一と、それがもたらす現象論的帰結について議論している。
SO(10)大統一理論は、標準模型のフェルミオンを1つのスピノール表現に統一し、ニュートリノ質量を自然に説明できる魅力的な枠組みである。最小限の模型では、ヒッグス場として随伴表現45H、スピノール表現16H、複素ベクトル表現10Hを導入する。
従来、SO(10)大統一理論では、中間スケールとして、左右対称性の破れスケールMI = MR ≃ 10^12 GeV が想定されてきた。しかし、本論文では、高次元演算子によるニュートリノ質量への寄与を考慮すると、中間スケールは必然的に大統一スケール付近(≳ 10^14 GeV)に位置しなければならないことを示している。
中間スケールが大統一スケール付近にある場合、ゲージ結合の統一を実現するためには、標準模型を超える新たな粒子状態が低いエネルギー領域に存在する必要がある。
本論文では、2ループレベルでの繰り込み群方程式を用いた解析を行い、カラーオクテットスカラー粒子がTeVスケール程度の質量を持つ場合、ウィークトリプレット、クォークダブレット、レプトンダブレット様のスカラー粒子も同様にTeVスケール程度の質量を持つ必要があることを示している。
これらの新たな粒子状態は、LHCや将来の加速器実験で探索可能である。特に、カラーオクテットスカラー粒子の質量が10-100 TeV程度であれば、ウィークトリプレット、クォークダブレット、レプトンダブレット様のスカラー粒子はTeVスケールとなり、近い将来の加速器実験で発見される可能性がある。
また、ニュートリノ質量に関しては、KATRIN実験などによる直接探索実験や、宇宙論的観測による間接的な制限がある。本論文の解析結果では、中間スケールが大統一スケール付近にある場合、ニュートリノ質量は0.1 eV以上となることが予想され、今後の実験による検証が期待される。
最小限のSO(10)大統一理論において、摂動論的有効性を保ちつつ現実的な現象論を再現するには、中間スケールが必然的に大統一スケール付近に位置しなければならない。この帰結として、標準模型を超える新たな粒子状態が低いエネルギー領域に存在することが予言され、LHCや将来の加速器実験、ニュートリノ質量探索実験による検証が期待される。
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