核心概念
プラスチック粒子のサイズと密度を考慮した新しい3次元オイラーモデルを用いて、海洋マイクロプラスチックの分布は粒子の特性によって大きく異なることが明らかになった。
要約
海洋マイクロプラスチック分布に関する研究論文の概要
参考文献: Tseng, Z.-E., Wu, Y., Menemenlis, D., Wang, G., Ruf, C., & Pan, Y. (2024). Distribution of plastics of various sizes and densities in the global ocean from a 3D Eulerian model. Journal of Geophysical Research: Oceans.
研究目的: 様々なサイズと密度のプラスチック粒子が海洋中をどのように移動し、分布するのかを、新しく開発した3次元オイラーモデルを用いて調査する。
手法:
- 海洋マイクロプラスチックの輸送を、粒子の浮力効果を考慮した移流拡散方程式を用いてモデル化。
- 粒子の終速度は、サイズと密度の両方に依存するよう設定。
- 海洋流速データは、ECCOv4r4データセットを使用。
- ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)の3種類のプラスチックについて、それぞれ異なるサイズと密度を設定しシミュレーションを実施。
主要な結果:
- 5つの亜熱帯環流域には、サイズが大きく(例:直径10µm)、海水よりも密度の低い(例:PE)プラスチック粒子が蓄積する傾向が見られた。
- サイズが小さい粒子(PEとPVCで≲1µm、PPで≲10µm)は、密度に関わらず中性浮力粒子と同様の分布を示し、海洋表面の蓄積は弱く、水深1km程度まで拡散していた。
- 表面濃度の季節変動は、混合層の深さの季節変動と相関しており、混合層内では粒子が均一に分布しているため、混合層の深さが変化すると表面濃度も変化することが示唆された。
結論:
- 海洋マイクロプラスチックの分布は、粒子のサイズと密度に大きく依存する。
- サイズの大きい、密度の低い粒子は亜熱帯環流域に蓄積しやすい一方、小さい粒子はより広範囲に拡散する。
- 表面濃度の季節変動は、混合層の深さの変化によって説明できる可能性がある。
本研究の意義:
本研究は、海洋マイクロプラスチックの輸送と分布に関する理解を深め、プラスチック汚染の将来予測や対策に貢献するものである。
今後の研究課題:
- プラスチックの破砕や生物付着の影響を考慮したモデルの開発
- リモートセンシングやトロール調査などの観測データを用いたデータ同化によるモデルの高度化
統計
PE-10粒子の終速度は6.3µm/s。
PP-100粒子の終速度は-27.3µm/s。
PVC-10粒子の終速度は-9.5µm/s。
PP-100粒子が約650mの深さまで沈降するのにかかる時間は約9ヶ月。
PVC-10粒子が海底まで沈降するのにかかる時間は約20年。