核心概念
カーブラックホールからの熱放射は、表面重力がゼロに近づく極限、つまり温度が絶対零度に近づく極限においても、特定の条件下で持続する。
要約
カーブラックホールからの熱放射:絶対零度における考察
本論文は、カーブラックホールから放射されるホーキング放射が、表面重力がゼロ、すなわち温度が絶対零度に近づく極限においても、特定の条件下で持続することを論じている。
従来の理解と論文の主張
- 従来、ブラックホールは完全に「黒い」、つまり外部との相互作用がない天体と考えられていた。
- しかし、ホーキング放射の発見により、ブラックホールは熱的に宇宙と相互作用する通常の天体であるという認識に変わった。
- ホーキング放射は、ブラックホールの表面重力κと温度T = κ/2πの関係によって記述される。
- 本論文では、κ→0の極限、すなわちT→0の極限におけるホーキング放射の振る舞いを評価している。
極限における放射の振る舞い
- ω > mΩ(Ωは事象の地平線の角速度、mは角運動量)のモードの放射は、κの減少とともに滑らかに減少し、κ→0の極限で停止する。
- しかし、ω < mΩのモードでは、κ→0の極限でも放射が持続する。
- この持続は、ボゾンモードとフェルミオンモードの両方で確認される。
- 絶対零度における熱放射は、極限状態のカーブラックホールから放射される非熱的な軟粒子の放射とは本質的に異なる振る舞いを見せる。
宇宙論への示唆
- ω < mΩのエネルギーを持つ粒子の放出は、ブラックホールの質量パラメータをわずかに減少させる一方で、角運動量パラメータをより大きく減少させる。
- この結果、ブラックホールは、宇宙検閲仮説と整合するように、極値から非極値状態へと移行する。
- 最初はκ = 0の極限状態にあったブラックホールは、正の表面重力、つまり温度を獲得する。
結論
- カーブラックホールからの熱放射は、T = 0の極限まで滑らかに拡張できる。
- この極限では、ω > mΩのエネルギーを持つ粒子の数はゼロに減少するが、ω < mΩのエネルギーを持つ粒子は、ボゾンモードとフェルミオンモードの両方で放射され続ける。
- このゼロ温度極限における振る舞いは、極限状態のブラックホールによる非熱的な軟粒子の放射とは一致しない。
- これらのモードの放出は、ブラックホールを極値から遠ざけ、ブラックホールに正の温度を獲得させる。
- ゼロ温度極限での放射は、ブラックホール力学の第三法則および宇宙検閲仮説と一致して、事象の地平線の安定性を強化する自然なメカニズムである。
統計
ブラックホールの温度T = κ/2π
ω < mΩ のエネルギーを持つ粒子の放出は、ブラックホールの質量パラメータをわずかに減少させる一方で、角運動量パラメータをより大きく減少させる。
ボゾン場とフェルミオン場の吸収確率は、それぞれ式(4)と式(13)で表される。
引用
"The thermal radiation at the limit κ → 0 and the non-thermal radiation at κ = 0 behave essentially differently."
"Radiation at the zero temperature limit is a natural mechanism reinforcing the stability of the event horizon in accord with the third law of black hole dynamics and the cosmic censorship conjecture."