核心概念
本研究は、従来の侵襲的な手法に代わり、MRIを用いて非侵襲的に膜電位の変化を検出できる可能性を示唆している。
参考文献: Min, K., Choi, S., Lee, S.-K., et al. Detection of changes in membrane potential by magnetic resonance imaging. NeuroImage, 2023.
研究目的:
本研究は、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて膜電位の変化を検出できるかどうかを調査することを目的とした。
方法:
培養細胞(神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞および白血球Jurkat細胞)と生体内ラットモデルを用いて、細胞外カリウムイオン濃度([K+])を変化させることで膜電位を操作し、T2緩和時間、プールサイズ比(PSR)、磁化移動率(kmf)などのMRIパラメータを測定した。
主な結果:
脱分極(または過分極)により、T2緩和時間は増加(または減少)し、PSR値は減少(または増加)した。
kmf値は、膜電位の変化に対して有意な変化を示さなかった。
生体内ラットモデルにおいても、培養細胞と同様のT2値の変化傾向が観察されたが、その変化量は小さかった。
結論:
本研究の結果は、MRIパラメータ、特にT2緩和時間とPSRが膜電位の変化を検出できることを示唆している。これは、MRIを用いて非侵襲的に膜電位の変化を検出できる可能性を示唆する先駆的な研究である。
意義:
本研究は、脳活動の直接的かつ非侵襲的なイメージングのための新しい道を切り開く可能性を秘めている。
限界と今後の研究:
生体内実験におけるT2値の変化量が小さかったことから、MRIの感度を向上させる必要がある。
膜電位の変化を引き起こす他の要因(pH、細胞外浸透圧など)の影響をさらに検討する必要がある。
活動電位などの動的な膜電位変化を検出できるかどうかを評価する必要がある。
統計
[K+] = 80 mMの脱分極条件下では、SH-SY5Y細胞においてT2値が20.0%増加し、PSR値が12.9%減少した。
[K+] = 0.2 mMの過分極条件下では、SH-SY5Y細胞においてT2値が4.40%減少し、PSR値が6.28%増加した。
生体内ラットモデルにおいて、[K+] = 80 mMの脱分極条件下では、T2値が2.34%増加した。