核心概念
イジングネマティック量子臨界点に結合したフェルミ面は、低エネルギーにおいて、フェルミ面の形状変形をパラメータ化するソフトモードを示し、その減衰率は系の安定性と輸送特性に重要な影響を与える。
要約
この論文は、イジングネマティック量子臨界点に結合したフェルミ面の低エネルギー有効理論を、(2+1)次元の並進対称性を持つ時空中で考察している。
研究の背景と目的
- ランダウのフェルミ液体理論は、相互作用するフェルミ粒子系の低エネルギー極限を記述する基本的な理論であるが、量子臨界点近傍の臨界揺らぎのような長距離揺らぎを受けると、準粒子は崩壊し、非フェルミ液体が現れる。
- 臨界フェルミ面は、非フェルミ液体を研究するためのトイモデルであり、フェルミ面と臨界的な(ギャップレスの)ボゾン場の結合からなる。
- これまでの研究では、Migdal-Eliashberg理論やYukawa-SYKモデルなどの様々なアプローチが提案されてきたが、本研究では、Yukawa-SYKモデルの枠組みの中で、並進対称性を持つ臨界フェルミ面の揺らぎスペクトルを研究する。
研究方法
- まず、大N極限から出発し、サドル点(Migdal-Eliashberg方程式)を求める。
- 次に、サドル点周りの1/N揺らぎを計算する。これは、揺らぎカーネルKBSを対角化する必要がある。
- このステップでは、まず揺らぎの内積を見つけ、その内積に関して固有値を計算する必要がある。
- その後、系の低エネルギー物理を記述するソフトモードが多数存在することがわかり、ソフトモードダイナミクスを捉える有効作用を導出する。
研究結果
- 対角化する必要があるカーネルKBSは、Bethe-Salpeter方程式を生成するものである。
- 現れるソフトモードは、フェルミ面の変形をパラメータ化するものであり、物理的には、QCP近傍での小角散乱の優位性のために、「ソフト」または減衰が遅い。
- これらのソフトモードの散逸率は、QCPに対するME理論の安定性を決定する。
- これらのソフトモードのガウス有効作用は、線形化された運動方程式、つまりボルツマン方程式につながる。
- QCPから遠く離れたFLではランダウの運動方程式を、QCPに近づくとプランジュ・カダノフの運動方程式に似た運動方程式が得られる。
- 運動方程式は、実空間におけるソフトモードの伝播を記述する。
結論
- イジングネマティック量子臨界点に結合したフェルミ面は、低エネルギーにおいて、フェルミ面の形状変形をパラメータ化するソフトモードを示す。
- ソフトモードの減衰率は系の安定性に影響を与え、イジングネマティックQCPはT=0では不安定であることがわかった。
- 有限温度では、QCPの熱揺らぎがNFLを安定化させるのに役立つ。
- ソフトモードは、系の輸送特性、特に流体力学的輸送に測定可能な影響を与える可能性がある。
統計
zb = 3 は、ボゾンの運動項 (q^2) の局所性によって要求される。
ソフトモードの減衰率は、奇数角高調波固有値では |Ω|^8/3 でスケールする。
Eliashberg理論の適用限界は、mb ∼ (mb)ME = √(g^2 kF / vF) に位置する。
引用
"The strongly correlated metal that arises is called a non-Fermi liquid (NFL)."
"The critical Fermi surface is a toy model for studying NFLs in (2+1) spacetime dimensions, consisting of a Fermi surface (FS) coupled to a critical (gapless) bosonic field."
"It is believed to capture essential physics related to half-filled Landau level, quantum spin liquids with spinon FS, and metallic quantum criticality."