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インサイト - Scientific Computing - # 高速イオン診断

負イオン中性粒子ビーム入射を用いたLHDにおける高エネルギー高速イオンの電荷交換測定


核心概念
大型ヘリカル装置(LHD)における新しい視線ジオメトリを用いた高速イオンDα(FIDA)診断により、負イオン中性粒子ビーム入射によって生成される高エネルギー高速イオンの信号測定が可能であることが確認された。
要約

研究論文の概要

書誌情報

Hayashi, W. H. J., Heidbrink, W. W., Muscatello, C. M., Lin, D. J., Osakabe, M., Ogawa, K., ... & Kamio, S. (2024). Charge-exchange measurements of high-energy fast ions in LHD using negative-ion neutral beam injection. arXiv preprint arXiv:2411.10597v1.

研究目的

本研究の目的は、大型ヘリカル装置(LHD)において、負イオン中性粒子ビーム入射(NNBI)によって生成される高エネルギー高速イオンを測定するために、新しい視線ジオメトリを用いた高速イオンDα(FIDA)診断の有効性を検証することである。

実験方法

本研究では、LHDにおいて低密度重水素実験を実施し、高エネルギー視線と低エネルギー視線の両方でFIDA信号を測定した。高エネルギー視線は、180 keVの接線方向NNBIビームラインをアクティブソースとして用い、低エネルギー視線は、従来から用いられている低エネルギーの垂直方向正イオン中性粒子ビームラインを用いた。測定されたFIDA信号は、5次元輸送コードGNETによってモデル化された分布関数を用いた合成高速イオン診断コードFIDASIMの予測値と比較検証された。

結果

実験の結果、高エネルギー視線では、NNBIビーム入射エネルギーに近いエネルギーを持つ高速イオンからのドップラーシフトしたFIDA発光が測定可能であることが確認された。測定されたFIDA信号は、FIDASIMの予測値と定性的に一致しており、高エネルギー視線が、高エネルギー高速イオンを十分な信号対雑音比で観測できることが確認された。

結論

本研究により、アクティブビームラインに対してほぼ接線方向のFIDA視線を用いることで、高エネルギー高速イオンを測定できることが実験的に確認された。この手法に基づけば、より高い入射エネルギーを用いることで、NBI加熱プラズマ中の100 keVを超える高速イオンのFIDA発光を測定することが可能となる。

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統計
NNBIの入射エネルギーは166 keV、入射パワーは1.5 MW。 PNBIの入射エネルギーは56 keV、入射パワーは3.5 MW。 プラズマの中心電子温度は5 keV、中心イオン温度は1.4 keV。 体積平均電子密度は0.8×10^19 m^-3。 プラズマ電流は5 kA(反時計回り)。 高エネルギー視線で観測されたFIDA発光ピークは662.2 nmで、これは視線方向のエネルギー成分が81 keVの高速イオンに対応する。 低エネルギー視線で観測されたFIDA発光ピークは661.8 nmで、これは視線方向のエネルギー成分が71 keVの高速イオンに対応する。
引用
"A new sightline geometry for the fast-ion D-alpha (FIDA) diagnostic on the Large Helical Device (LHD) has been confirmed to measure signals for high-energy fast ions produced by negative-ion neutral beam injection." "The results of the experiment confirm that reducing the viewing angle with a tangential active beam allows FIDA diagnostic to view high-energy fast ions with a sufficient signal-to-noise ratio."

深掘り質問

この新しいFIDA診断技術は、将来の核融合炉における高速イオンの挙動を理解し、制御するためにどのように活用できるだろうか?

将来の核融合炉では、プラズマ加熱や電流駆動において高速イオンが重要な役割を担うことが予想されています。この新しいFIDA診断技術は、高エネルギーの負イオンビームを入射するNNBI加熱システムを採用するJT-60SAやITERなどの将来の核融合炉において、以下のような形で活用できると考えられます。 高速イオンの閉じ込め性能評価: 高エネルギー視線を用いたFIDA診断により、核融合反応で生成される高エネルギーアルファ粒子を含む、高速イオンの空間分布、速度分布、エネルギー分布を詳細に計測することができます。これらの情報は、高速イオンの閉じ込め性能を評価する上で非常に重要となります。 NNBI加熱効率の最適化: FIDA診断で得られた高速イオン分布の情報は、NNBI加熱システムの最適化に役立ちます。ビーム入射方向やエネルギーなどを調整することで、より効率的にプラズマを加熱し、核融合反応を維持することが可能になります。 プラズマ不安定性の抑制: 高速イオンはプラズマ中の不安定性を励起する可能性があります。FIDA診断によって高速イオン分布の時間変化をリアルタイムで計測することで、不安定性の発生メカニズムを解明し、それを抑制するためのフィードバック制御系に情報を提供することができます。

高エネルギー視線を用いたFIDA診断は、低エネルギー高速イオンに対して感度が低いという欠点がある。この欠点を克服するために、どのような対策が考えられるだろうか?

ご指摘の通り、高エネルギー視線を用いたFIDA診断は、低エネルギー高速イオンに対して感度が低くなるという課題があります。この課題を克服するために、以下の様な対策が考えられます。 複数視線計測: 複数の視線を用いてFIDA計測を行うことで、異なるエネルギー領域の高速イオンを計測することが可能になります。具体的には、高エネルギー視線に加えて、従来の低エネルギー視線も同時に計測することで、広範囲のエネルギー領域をカバーできます。 計測波長の拡張: より長波長側の発光スペクトルを観測することで、低エネルギーの高速イオンからの信号を取得することが可能になります。ただし、そのためには検出器の感度やノイズ特性を向上させる必要があります。 他の計測手法との組み合わせ: FIDA診断単独ではなく、中性粒子分析器(NPA)や集団トムソン散乱(CTS)などの他の高速イオン計測手法と組み合わせることで、より詳細な高速イオン分布の情報を得ることが可能になります。

高エネルギー高速イオンの挙動をより詳細に理解することで、プラズマの閉じ込め性能を向上させるための新たな知見が得られる可能性がある。どのような研究が考えられるだろうか?

高エネルギー高速イオンの挙動をより詳細に理解することは、プラズマの閉じ込め性能向上に不可欠です。以下に、考えられる研究の方向性を示します。 高速イオンとMHD不安定性の相互作用解明: 高エネルギー高速イオンは、プラズマ中のMHD不安定性と複雑に相互作用し、閉じ込め性能を劣化させる可能性があります。FIDA診断などを用いて、高速イオンの空間分布や速度分布とMHD不安定性の発生・成長の関係を詳細に調べることで、相互作用メカニズムを解明し、不安定性を抑制する手法の開発につなげることが期待されます。 高速イオンによる輸送現象の解明: 高エネルギー高速イオンは、それ自身の軌道損失だけでなく、プラズマ中の熱輸送や粒子輸送にも影響を与える可能性があります。FIDA診断などで高速イオン分布を計測し、輸送コードと組み合わせることで、高速イオンが輸送現象に与える影響を定量的に評価し、閉じ込め性能向上のためのシナリオ開発に役立てることができます。 高速イオン分布制御による閉じ込め改善: 高エネルギー視線を用いたFIDA診断などで高速イオン分布をリアルタイムで計測し、その情報を基にNNBI加熱システムのビーム入射方向やエネルギーを制御することで、高速イオン分布を積極的に制御し、プラズマの閉じ込め性能を向上させる研究が考えられます。 これらの研究は、将来の核融合炉における高性能プラズマの実現に向けて、重要な知見を提供すると期待されます。
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