本研究論文は、銀河中心から放出された超大質量ブラックホール(SMBH)の検出における、アストロメトリックジッターという新しい手法の有効性について検証しています。SMBHは、重力波の反動や、銀河合体後のスリングショットメカニズムによって、銀河中心から放出される可能性があります。放出されたSMBHが内部降着円盤を保持している場合、核から離れた活動銀河核(AGN)として観測される可能性があります。
反跳またはスリングショットの候補となるオフセットAGNは、これまでにほんの一握りしか発見されておらず、どれも決定的な確認はされていません。これは、従来の検出手法が高解像度イメージングや分光法に依存しており、時間と費用がかかるためです。
本論文では、ガイア観測で開発された「varstrometry」(変動とアストロメトリーを組み合わせた造語)という手法を応用し、光学サーベイデータからオフセットAGNを迅速に特定する方法を提案しています。この手法は、青と赤のアストロメトリックジッターの差異に着目し、Pan-STARRS1 3πサーベイデータに適用した結果、5つの新たな反跳AGN候補を発見しました。
本論文では、特にZTF18aajyzfvと呼ばれる候補天体に焦点を当て、ケック望遠鏡LRIS分光器による追跡観測とASTRIDシミュレーションとの比較を行いました。その結果、ZTF18aajyzfvは二重AGNである可能性が高いと結論付けられています。
本論文で提案されたアストロメトリックジッターを用いた選択手法は、今後稼稼働予定のベラ・ルービン天文台のLegacy Survey of Space and Time (LSST) のデータにも容易に適用できます。LSSTは、Pan-STARRS1よりも高い頻度と深い限界等級で観測を行うため、さらに多くの反跳SMBH候補の検出が期待されます。
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