核心概念
本研究は、第一原理計算を用いて、Ni2MnGaマルテンサイトのせん断変形におけるナノ twin の形成と、それが twin 再配向やマルテンサイト変態に及ぼす影響を解明することを目的とする。
要約
書誌情報
Heczko, M., Šesták, P., Seiner, H., & Zelený, M. (n.d.). Shear Deformation of Nonmodulated Ni2MnGa Martensite: An Ab Initio Study.
研究目的
本研究は、非変調Ni2MnGaマルテンサイトの(101)[101]せん断系におけるせん断変形の影響を、第一原理計算を用いて調査することを目的とする。
方法
- スピン分極密度汎関数理論に基づく第一原理計算を用い、Vienna Ab Initio Simulation Package (VASP) を使用して計算を行った。
- せん断変形をシミュレートするために、3つの異なるせん断メカニズム(純せん断、双晶せん断、単純せん断)を検討した。
- 各せん断メカニズムについて、全エネルギー、せん断応力、構造変化を計算した。
- 一般化積層欠陥エネルギー(GPFE)曲線を計算し、双晶形成のエネルギー論を調べた。
- 異なるMn含有量の影響を調べるために、化学量論組成と非化学量論組成の両方を検討した。
主な結果
- 純せん断メカニズムは、エネルギー障壁とせん断応力が最も低いが、双晶面における寸法変化のため、現実的ではない。
- 双晶せん断メカニズムは、双晶面の保存を考慮しており、最も現実的なメカニズムと考えられる。
- 単純せん断メカニズムは、計算が容易で、双晶せん断メカニズムの良い近似となる。
- せん断変形経路に沿って、格子変調やナノ双晶が自発的に現れることがわかった。
- ナノ双晶は、2つの原子面からなるナノ双晶が最もエネルギー的に安定であることがわかった。
- ナノ双晶の二重層は、変調構造の基本的な構成要素であり、マルテンサイト変態において重要な役割を担っている。
結論
本研究の結果は、Ni2MnGaマルテンサイトのせん断変形におけるナノ双晶の形成と、それが双晶再配向やマルテンサイト変態に及ぼす影響を明らかにした。
意義
本研究は、Ni-Mn-Ga系強磁性形状記憶合金の機械的特性と機能的特性を理解するための基礎的な知見を提供するものである。
制限事項と今後の研究
- 本研究では、温度の影響を考慮していない。
- 本研究では、欠陥や不純物の影響を考慮していない。
- 今後の研究では、より大きなスーパーセルを用いて、より複雑な変調構造を調べることが必要である。
統計
非化学量論合金Ni50Mn31.25Ga18.75では、純せん断変形経路に沿って、β≅92.3°で変調構造が安定化する。
Ni50Mn28.125Ga21.875合金では、変調構造に対応するエネルギー最小値はβ≅91.0°で見られる。
化学量論組成Ni2MnGaでは、変調構造のエネルギーはNM構造より約2 meV/atom低い。
Ni50Mn28.125Ga21.875合金では、変調構造のエネルギーはNM構造より約-0.5 meV/atom低い。
NM→4O変態のエネルギー障壁は、NM→10M変態のエネルギー障壁とほぼ同じである。
NM→14M変態経路では、約1 meV/atom低い障壁が見つかった。
2層双晶のエネルギーは-0.24 meV/atom、4層双晶のエネルギーは-0.16 meV/atomに減少する。
最初の障壁は、エネルギーが4.42 meV/atomから3.90 meV/atomに減少する。
化学量論合金では、βmaxは、純変調経路を除いて、せん断メカニズムに依存せず、工学的ひずみの約5.5%に相当する。
純変調経路では、βmaxは3.8%に等しい。
Mn含有量が増加すると、βmaxも増加し、Ni50Mn28.125Ga21.875合金では約7.6%、Ni50Mn31.25Ga18.75合金では9.7%の値となる。
NM→14M変態では、βmaxは2.9%に等しい。
引用
"The reorientation of martensite via a/c twinning is an affine shear deformation of the lattice by applying shear strain in the (101)[101] shear system."
"The modulated structures can be also viewed as nanotwinned lattice of NM martensite [26]."
"As follows from the nanotwinning concept, the reorientation of a/c twin variants in NM martensite and intermartensitic transformation between modulated and NM structures could be based on the same mechanism."