核心概念
従来の流体力学では記述が困難であった希薄気体の振る舞いを、運動論的境界条件を取り入れた非局所流体力学を用いることで、広範囲のクヌーセン数において正確に予測できる。
要約
研究の概要
本論文は、線形化ボルツマン方程式の遅いスペクトル閉包理論と、任意の調節係数を考慮したマクスウェルの運動論的境界条件を組み合わせることで、希薄効果を正確に予測する非局所流体力学モデルを導出しています。
研究内容
- 非局所流体力学は、従来の流体力学(ナビエ・ストークス方程式など)では記述が困難であった、希薄気体の温度ジャンプや速度滑りなどの特性を捉えることができる。
- 本研究では、運動論的境界条件を組み込むことで、非局所流体力学モデルを拡張した。
- 拡張されたモデルは、平面クエット流れや熱クリープなどの古典的な希薄気体流れ問題に対して、広範囲のクヌーセン数において正確な解を提供する。
- 特に、クヌーセン数が1程度の比較的大きな値でも、従来の流体力学では記述できない希薄効果を正確に捉えることができることを示した。
- これらの結果は、BGK衝突モデルを用いた数値計算結果と比較検証され、その正確性が確認された。
結論
本研究で提案された非局所流体力学モデルは、従来の流体力学では記述が困難であった希薄気体の振る舞いを、広範囲のクヌーセン数において正確に予測できることを示した。
統計
平面クエット流れのシミュレーションでは、クヌーセン数 ∼O(10) までの範囲で、非局所流体力学モデルの結果はBGK運動論方程式の数値解と非常によく一致した。
熱クリープ流れのシミュレーションでは、クヌーセン数 ∼O(1) までの範囲で、非局所流体力学モデルの結果はBGK運動論方程式の数値解と非常によく一致した。
引用
"The non-local hydrodynamics thus provide a dynamically optimal description of a rarefied gas in terms of conventional macroscopic fields (density, momentum and energy) that goes way beyond the Navier–Stokes equation."
"We demonstrated that rarefaction effects are solely a consequence of the non-locality of exact hydrodynamics, a feature which is not shared by any approximate hydrodynamics such as Navier–Stokes or Burnett [19]."