核心概念
熱平衡状態にない物体において、量子真空のゆらぎにより自発的な推進力とトルクが発生する可能性があり、特に非相反材料や不均一なキラル物体において顕著である。
要約
非平衡状態における量子真空による物体の自発的推進力とトルク
この論文は、黒体輻射との熱平衡状態にない物体に働く、自発的な量子真空力とトルクに関する研究をまとめたものです。
量子真空は、古典物理学では空虚とされる空間にも、エネルギー揺らぎが存在するという量子力学的な概念です。この揺らぎは、カシミール効果のように巨視的な物体にも影響を与えることが知られています。本研究では、熱平衡状態にない物体が量子真空から受ける力とトルクについて、電気感受率の次数展開を用いて系統的に解析しています。
非相反媒質におけるトルク
一次電気感受率の範囲では、非相反媒質で構成された物体にのみトルクが発生する。
このトルクは、外部磁場によって非相反性が生み出されるため、純粋な真空現象ではない。
自己推進力
相反媒質であっても、物体が不均一な場合には、二次電気感受率のオーダーで自発的な力が発生する。
この力は、物体の温度差と、構成物質の電気感受率の差によって生じる。
論文では、細い針、薄い球殻、ヤヌス球、平面構造など、具体的な形状の物体に対する力の計算例が示されている。
不均一キラル物体におけるトルク
二次電気感受率のオーダーでは、均一でないキラル物体にもトルクが発生する。
このトルクは、物体の温度差と、構成物質の電気感受率の差、およびキラリティによって生じる。
論文では、デュアルアレンレンチやデュアルフラッグといった形状の物体に対するトルクの計算例が示されている。