核心概念
本稿では、Gogny D1S相互作用を用いた射影生成座標法(PGCM)計算に基づき、$^{84}$Mo原子核が基底状態を含む複数の形状を持つ可能性を示唆しています。
書誌情報
Tomás R. Rodríguez. (2024). Multiple shape coexistence in the N=Z $^{84}$Mo nucleus. arXiv, 2411.08682.
研究目的
本研究の目的は、Gogny D1S相互作用を用いた射影生成座標法(PGCM)計算に基づき、N=Z核である$^{84}$Moの構造を調査し、特に形状共存の可能性について調べることです。
方法
Gogny D1S相互作用を用いた粒子数射影ハートリー・フォック・ボゴリウボフ(HFB)計算を行い、$^{84}$Mo原子核のエネルギー曲面を計算しました。
エネルギー曲面における極小点に対応する変形状態を、粒子数と角運動量で射影した状態を生成し、それらの状態を混合することで、形状共存の効果を取り入れた計算を行いました。
得られたエネルギー準位図を実験データと比較し、$^{84}$Mo原子核の形状共存について議論しました。
主な結果
$^{84}$Mo原子核のエネルギー曲面は、球形、三軸性変形、超変形など、複数の極小点を持つことが明らかになりました。
角運動量射影と配置混合を行うことで、基底状態を含む複数の0+状態が、異なる固有変形を持つことが示唆されました。
基底状態バンドの励起エネルギーに関する理論計算結果は、実験データと良い一致を示しました。
結論
本研究の結果は、$^{84}$Mo原子核が基底状態を含む複数の形状を持つ可能性を示唆しており、形状共存を示す強い候補であると考えられます。
意義
本研究は、陽子と中性子が同数の原子核における形状共存現象の理解を深める上で、重要な知見を提供するものです。
限界と今後の研究
本研究では、陽子-中性子ペアリングなどの効果は考慮されていません。
今後の研究では、これらの効果を取り入れたより精密な計算を行うことで、$^{84}$Mo原子核の形状共存に関するより詳細な理解が得られると期待されます。
統計
実験的に観測されている$^{84}$Mo原子核の基底状態バンドのエネルギー準位は、理論計算結果とよく一致している。
エネルギー曲面計算の結果、$^{84}$Mo原子核は、球形(β2 ≈ 0)、三軸性変形(β2 ≈ 0.4, γ ≈ 20°)、超変形(β2 ≈ 0.65, γ ≈ 0°)など、複数の極小点を持つ。