核心概念
N=1 SQCD型理論における質量スペクトルの計算を可能にする具体的な動力学的シナリオを導入し、その有効性を検証する。このシナリオは、N=1 Seiberg双対性の問題点を明らかにするとともに、ストリング理論を用いた導出における暗黙の仮定や限界を明確にする。
要約
N=1 SQCD、N=1 SQCD型理論、ソフトに破れたN=2→N=1 SQCDにおける質量スペクトル、およびN=1 Seiberg双対性の問題点
この論文は、N=1およびN=2の超対称量子色力学(SQCD)とN=1 SQCD型理論の強結合領域におけるダイナミクス、特に質量スペクトルに関するレビュー論文である。
4次元の強結合非可換ゲージ理論のダイナミクスは複雑である。超対称性(SUSY)は、通常の(非SUSY)理論と比較して、いくつかの単純化をもたらすことが知られており、現実世界との関連性も期待されている。特に、通常のQCDのSUSY版である、SU(Nc)カラーとNFフレーバーのクォークを持つN=1 SQCDのダイナミクスは興味深い研究対象である。
しかし、N=1 SQCDでさえ、強結合領域におけるダイナミクスの非自明な特徴を記述する物理的な描像は完全には確立されていない。特に、質量スペクトルの主要な特徴を計算する方法さえ、これまで明確ではなかった。
これまで最も有力な提案は、N. Seibergによって提唱された双対性、すなわち、スケールµ < ΛQにおける低エネルギー双対理論である[4, 5]。この双対理論は、直接理論が強結合である場合、多くの場合弱結合となり、逆もまた同様である。
Seiberg双対性は、多くの非自明な検証(主に't Hooft三角形と共形領域における振る舞い)に合格しているが、直接理論と双対理論が低エネルギーµ < ΛQで実際に等価である(または等価でない)ことの証明は、これまでなされていない。特に、直接理論において、双対クォークの量子数を持つNc + 1 < NF < 3Nc/2のソリトンをどのように得るか、またその逆についても、これまで示されていなかった。したがって、µ < ΛQにおいて直接理論と双対理論が等価であるというSeibergの提案は、今のところ仮説のままである。