核心概念
本稿では、低輝度LHC運転で収集されたデータを用い、WボゾンとZボゾンの横運動量スペクトルを高精度で測定し、モンテカルロシミュレーションと比較することで、QCDの予測の検証と改善を目指しています。
要約
書誌情報
- タイトル: √s = 5.02 TeVおよび13 TeVのpp衝突を用いたATLAS検出器によるWおよびZボゾンの横運動量スペクトルの精密測定
- 著者: ATLAS Collaboration
- ジャーナル: Eur. Phys. J. C 84 (2024) 1126
- DOI: 10.1140/epjc/s10052-024-13414-0
- CERN-EP-2024-080
- 出版日: 2024年11月14日
- arXiv:2404.06204v2 [hep-ex] 2024年11月12日
研究目的
この研究の主な目的は、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)で√s = 5.02 TeVおよび13 TeVの陽子-陽子衝突で生成されたWボゾンとZボゾンの横運動量スペクトルを高精度で測定することです。
方法
- ATLAS検出器を用いて、低輝度LHC運転で収集されたデータを使用。
- 電子とミューオンの両方のレプトンチャネルで測定を実施。
- Wボゾンの測定は、W-とW+生成に対して別々に実行。
- ハドロン反跳の再構成と較正を行い、Wボゾンの横運動量を推定。
- 測定結果は、パートンシャワーモンテカルロイベントジェネレーターと解析的再合計に基づくQCD計算と比較。
主な結果
- 電子のエネルギー較正、ミューオンの運動量較正、ハドロン反跳の較正など、測定の精度を高めるための詳細な較正手順を開発。
- WボゾンとZボゾンの横運動量スペクトルを高精度で測定。
- 測定されたスペクトルは、モンテカルロイベントジェネレーターによる記述と比較され、一部の領域では改善の余地があることが示唆。
- 特に、DYTurboに基づく高次、再合計予測は、スペクトル全体でデータと最もよく一致。
結論
- 本研究で得られた高精度な測定結果は、QCDの予測を検証し、モンテカルロシミュレーションの改善に貢献する。
- 特に、低横運動量領域におけるWボゾン質量の測定の精度向上に役立つ。
意義
この研究は、標準模型の重要なテストであるWボゾンとZボゾンの生成に関する我々の理解を深める上で重要です。測定されたスペクトルは、QCDの予測を検証し、モンテカルロイベントジェネレーターの精度を向上させるために使用できます。これは、LHCでの他の測定、特に低横運動量領域におけるWボゾン質量の測定の精度に影響を与えます。
制限と今後の研究
この研究の統計的精度は、使用されるデータセットのサイズによって制限されています。今後のLHCのデータ収集と理論的進展により、これらの測定の精度がさらに向上し、WボゾンとZボゾンの生成に関するより深い洞察が得られると期待されます。
統計
データセットの積分ルミノシティは、√s = 5.02 TeVで254.9 ± 2.6 pb-1、√s = 13 TeVで338.1 ± 3.1 pb-1。
√s = 5.02 TeV(13 TeV)のデータでは、W→eνチャネルで合計7.1×10^5(2.2×10^6)個のWボゾン候補イベント、W→μνチャネルで7.5×10^5(2.2×10^6)個のイベントが選択。
√s = 5.02 TeV(13 TeV)のデータでは、電子チャネルで合計5.2×10^4(1.7×10^5)個のZボゾン候補、ミューオンチャネルで7.0×10^4(2.1×10^5)個のZボゾン候補が見つかる。
引用
"Measurements of 𝑊- and 𝑍-boson production in proton–proton (𝑝𝑝) collisions at the Large Hadron Collider (LHC) constitute a sensitive test of Quantum Chromodynamics (QCD)."
"Precise measurements and predictions of the spectra in the region 𝑝𝑉
T ≲30 GeV are of particular interest for the measurement of the 𝑊-boson mass at hadron colliders."
"This paper presents measurements of the 𝑊- and 𝑍-boson 𝑝𝑉
T distributions in 𝑝𝑝collisions, using data collected in dedicated LHC runs with low instantaneous luminosity at centre-of-mass energies of √𝑠= 5.02 TeV and √𝑠= 13 TeV."