核心概念
本稿では、LHCのCMS実験で収集された138 fb$^{-1}$のデータを用いて、Zボソンとヒッグスボソンに崩壊する重い共鳴状態の探索を行い、重いベクトル三重項モデルのパラメータ空間における新たな制限を得た。
要約
研究論文の概要
書誌情報
- タイトル: $\sqrt{s}$ = 13 TeV陽子-陽子衝突における、高エネルギーのジェットと2つの電子、2つのミュー粒子、または横方向運動量の不足を伴う事象における、Zボソンとヒッグスボソンに崩壊する重い共鳴の探索
- 出版機関: CERN
- 著者: CMS Collaboration
- 出版日: 2024年11月4日
研究目的
本研究の目的は、LHCのCMS実験で収集された138 fb$^{-1}$のデータを用いて、Zボソンとヒッグスボソンに崩壊する重い共鳴状態を探索し、標準模型を超える物理の可能性を探ることである。
方法
- 13 TeVの陽子-陽子衝突データを用いて、Zボソンが電子対、ミューオン対、ニュートリノ対に崩壊し、ヒッグスボソンがハドロン崩壊する事象を探索した。
- ヒッグスボソンは単一の高エネルギーAK8ジェットとして再構成され、Zボソン系に対して大きな方位角方向の分離を持つことを要求した。
- 機械学習ベースのフレーバータギング技術を用いて、運動量を持つヒッグスボソンがチャームクォーク対、ボトムクォーク対、または中間状態H→WWおよびZZ崩壊を介した4つのクォークに崩壊する現象を識別した。
- 背景事象の予測には、データ駆動型の方法を用いて、観測された質量分布に一次元関数をフィッティングした。
主な結果
- 解析の結果、探索領域において有意な信号は見られなかった。
- 観測されたデータと標準模型の背景事象の予測との間に有意なずれはみられなかった。
- 重いベクトル三重項モデルにおけるフェルミオン結合(gF)とボソン結合(gH)の2次元的な上限が設定された。
- 本解析単独では、モデルAとモデルBに対してそれぞれ2.8 TeVと3 TeVのZ'ボソン質量の下限が得られた。
結論
本研究では、LHCのCMS実験で収集された138 fb$^{-1}$のデータを用いて、Zボソンとヒッグスボソンに崩壊する重い共鳴状態の探索を行った。その結果、重い共鳴の証拠は見つからず、重いベクトル三重項モデルのパラメータ空間における新たな制限が得られた。
意義
本研究は、LHCにおける高エネルギー衝突データを用いた新粒子探索の現状を示すものである。得られた結果は、標準模型を超える物理モデルの制限に重要な情報を提供する。
制限と今後の研究
- 本研究では、特定の重いベクトル三重項モデルに焦点を当てている。他の新粒子モデルの探索には、異なる解析手法が必要となる可能性がある。
- 今後、より多くのデータが蓄積されることで、探索の感度が向上し、より重い質量領域を探索することが可能になる。
統計
データは、2016年から2018年にかけてCMS検出器で収集された、$\sqrt{s}$ = 13 TeVの陽子-陽子衝突に対応する138 fb$^{-1}$の積分ルミノシティに相当する。
解析では、Zボソンが電子対、ミューオン対、ニュートリノ対に崩壊し、ヒッグスボソンがハドロン崩壊する事象を探索した。
H→bb事象の約60%が、2つのbタグ付きサブジェットを持つジェットの棄却にもかかわらず、選択された信号事象を構成している。
HvsQCD識別に基づく選択により、残りのH→bb事象の大部分が保持され、同時に背景事象が大幅に棄却される。
HvsQCDスコアで選択した後、観測された信号事象の相対的な寄与は、H→bb、qqqq、cc、ττ崩壊からそれぞれ約60%、20%、15%、5%である。
引用
"Compared with previous analyses, the sensitivity for high resonance masses is improved significantly in the channel where at most one b quark is tagged."
"The analysis presented in this article demonstrates a significant improvement in the sensitivity for the category with fewer than two identified b quarks."
"We used a combination of b, c, and light-flavor tagging for hadronic H boson final states to improve the sensitivity of a BSM search at high resonance masses."