核心概念
12族元素の静的双極子分極率に対する相対論効果と電子相関効果を、相対論的結合クラスター法を用いて高精度に計算した結果、スカラー相対論効果が支配的であり、スピン軌道結合効果は無視できることが明らかになった。
研究概要
本論文は、有限場アプローチと相対論的結合クラスター法を用いて、12族元素(亜鉛、カドミウム、水銀、コペルニシウム)の静的双極子分極率を高精度に計算した研究論文である。
研究目的
原子や分子の分極率は、原子散乱断面積、屈折率、誘電率、原子間相互作用など、原子・分子物理学における基礎的な相互作用を理解するために不可欠な量である。本研究では、12族元素の分極率を高精度に決定することを目的とした。
研究方法
本研究では、有限場アプローチと相対論的結合クラスター法を組み合わせた計算手法を用いた。具体的には、単励起、二重励起、摂動的三重励起を含む結合クラスター法(CCSD(T))を用い、スカラー相対論効果、スピン軌道結合(SOC)効果、完全相対論的ディラック・クーロン寄与の3種類の相対論効果を調べた。
研究結果
最終的に推奨される分極率の値は、亜鉛で37.95±0.72、カドミウムで45.68±1.16、水銀で34.04±0.67、コペルニシウムで27.92±0.24であった。
これらの結果は、2018年の「中性原子の静的双極子分極率表」の推奨値とよく一致しており、カドミウムとコペルニシウムについては不確かさが低減された。
解析の結果、これらの原子の原子双極子分極率に対する相対論的寄与は、スカラー相対論効果が支配的であり、SOC効果は無視できることがわかった。
さらに、すべての相対論的領域における電子相関の影響を評価し、双極子分極率の正確な決定における電子相関の重要な役割を強調した。
結論
本研究の結果、12族元素の静的双極子分極率に対する相対論効果と電子相関効果を高精度に評価することができた。本研究で得られた分極率の値は、原子・分子物理学における基礎的な研究や、分極可能な力場の開発などに役立つことが期待される。
統計
亜鉛の推奨される分極率は37.95±0.72 a.u. である。
カドミウムの推奨される分極率は45.68±1.16 a.u. である。
水銀の推奨される分極率は34.04±0.67 a.u. である。
コペルニシウムの推奨される分極率は27.92±0.24 a.u. である。