核心概念
FeNiCu 中エントロピー合金の局所化学秩序(LCO)は、欠陥の形成と移動に影響を与えることで、ランダムな原子配置と比較して、照射損傷に対する耐性を向上させる。
要約
FeNiCu 中エントロピー合金における照射誘起欠陥ダイナミクスの原子論的調査:局所化学秩序の影響
書誌情報: Kazi Tawseef Rahman, Mustofa Sakif Shahriar, Mashaekh Tausif Ehsan, Mohammad Nasim Hasan. (発行年不明). Atomistic investigation of irradiation-induced defect dynamics in FeNiCu medium-entropy alloy: effect of local chemical order.
研究目的: 本研究では、ハイブリッド分子動力学(MD)およびモンテカルロ(MC)シミュレーションを用いて、Coフリー中エントロピー合金(MEA)であるFeNiCuの照射挙動を調査し、局所化学秩序(LCO)が欠陥ダイナミクスおよびエネルギティクスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
手法: 原子論的レベルでのシミュレーションを用いて、FeNiCu MEAのランダム構造(RSS)と秩序構造(LCO)の両方における照射誘起欠陥のダイナミクスを調べた。比較のために、純粋なNiもシミュレートした。最大500回の連続する変位カスケードを実行し、フレンケル対の数、形成エネルギー、移動エネルギー、転位密度などの主要な指標を用いて、複数の変位カスケードにおける耐放射線を評価した。
主要な結果: LCOを有するFeNiCu MEAは、RSSや純Niと比較して、照射損傷に対して優れた耐性を示した。これは、LCOが欠陥の形成と移動に影響を及ぼし、欠陥の再結合を促進し、欠陥クラスターの形成を抑制するためであると考えられる。特に、LCO構造ではCuリッチな領域が効果的な欠陥トラップとして機能し、欠陥拡散と再結合が促進されることがわかった。さらに、LCO構造は、照射誘起膨潤に対する耐性の向上を示唆する、より低い階段状転位密度を示した。
結論: FeNiCu MEAにおけるLCOの存在は、欠陥ダイナミクスに大きな影響を与え、ランダムな原子配置と比較して照射損傷に対する耐性を向上させる。この知見は、原子分布がM/HEAの放射線損傷とどのように相互作用するかについてのより深い洞察を提供する。これは、困難な原子力環境に不可欠な、強化された耐放射線材料を設計するための理論的枠組みを提供する。CoフリーM/HEAの将来の研究は、組成と処理の最適化のための有望な道を提供するLCOの調整可能性から利益を得るかもしれない。
本研究は、FeNiCu MEAの照射挙動におけるLCOの重要性を示しており、これは原子力産業における次世代構造材料の開発に重要な意味を持つ。LCOを調整することで、材料の照射損傷に対する耐性を向上させることが可能になる可能性があり、これは原子炉の安全性と寿命の向上につながる可能性がある。