核心概念
宇宙に最も豊富に存在する元素である中性水素(HI)の観測は、宇宙の構造形成、ダークマター、ダークエネルギー、宇宙再イオン化といった宇宙論の主要なテーマを解明するための鍵となる。
要約
HIを用いた宇宙論:ダークマター、ダークエネルギー、宇宙の初期を解き明かす
この論文は、宇宙論における中性水素(HI)の重要性を包括的にレビューし、宇宙の進化を探る上でHI観測がどのように役立つかを探求しています。
水素は宇宙で最も豊富な元素であり、宇宙進化の初期段階において、その大部分はイオン化された形態で存在していました。
ビッグバンから約30万年後に、宇宙の温度が低下したため、陽子と電子から中性水素原子(「HI」と表記)が形成されました。
最初の星や銀河が形成されると、大量の紫外線が放射され、HIは再びイオン化されました。この宇宙再イオン化と呼ばれる時代は、宇宙の進化における重要な転換期でした。
宇宙の再イオン化後、HIは主に銀河内に存在しますが、初期の宇宙では、銀河間物質(IGM)に主に存在していました。
宇宙の歴史全体にわたるHIの進化をマッピングすることで、ダークマター、ダークエネルギー、宇宙の初期時代に関するモデルに最も正確な制限を与える、包括的な宇宙論的データセットが得られます。
宇宙論的なHIは、主に2つの放射遷移を通して観測されます。1つは紫外線領域のライマンα線(静止波長1216 Å)、もう1つは電波帯域の21cm線です。
ライマンα線は、宇宙再イオン化以前の時代(z∼6未満)に、銀河間物質中のHI雲を研究するために伝統的に使用されてきました。
21cm線は、宇宙再イオン化時代とその前の時代(z>10)に、HIの分布と進化を研究するための有望なプローブです。