核心概念
最新の近似N3LO(aN3LO)Parton分布関数(PDF)セットを用いることで、LHCにおけるHiggs生成断面積の予測精度が大幅に向上する。
要約
LHC における aN$^3$LO Parton 分布関数と Higgs 生成断面積への影響
書誌情報
T. Cridge et al. (MSHT Collaboration and NNPDF Collaboration), "Combination of aN$^3$LO PDFs and implications for Higgs production cross-sections at the LHC," arXiv:2411.05373v1 [hep-ph] (2024).
研究目的
本研究の目的は、最新の近似N3LO(aN3LO)Parton分布関数(PDF)セットを用いて、LHCにおけるHiggs生成断面積のより正確な予測を提供することである。
方法
本研究では、MSHTとNNPDFの2つのグループによって開発された2つのaN3LO PDFセット、MSHT20とNNPDF4.0を組み合わせた。これらのセットは、PDFの決定に使用される理論的予測における高次補正の欠落による不確実性を含むかどうかが異なる。本研究では、これらの違いを考慮して、2つのセットを組み合わせ、保守的な不確実性推定値を得るための方法を提案している。
主な結果
MSHT20とNNPDF4.0のaN3LO PDFセットは、全体として互換性があるものの、いくつかのパートン種、特にグルーオンPDFで顕著な違いが見られる。
これらの違いは、パートン光度、特にグルーオン-グルーオン光度に影響を与え、LHCにおけるHiggs生成断面積の予測に影響を与える。
NNLO PDFの代わりにaN3LO PDFを使用すると、特にグルーオン-グルーオンおよびクォーク-クォークの光度に敏感なHiggsグルーオンおよびベクトルボソン融合チャネルにおいて、より正確なN3LO現象論が可能になる。
結論
本研究では、2つの既存のaN3LO PDFセットを組み合わせることで、LHCにおけるHiggs生成断面積のより正確な予測が可能になることを示した。この組み合わせは、個々のセットよりも保守的な不確実性推定値を提供し、LHC現象論の精度を向上させるために重要である。
意義
本研究は、LHCにおけるHiggs生成断面積の理論計算の精度を向上させるものであり、実験データの解釈や新しい物理現象の探索に重要な意味を持つ。
制限と今後の研究
本研究では、2つの特定のaN3LO PDFセットの組み合わせに焦点を当てている。今後、より多くのaN3LO PDFセットが利用可能になれば、より包括的な組み合わせ分析を行うことが望ましい。また、本研究では、PDFの決定に使用される理論的予測における高次補正の欠落による不確実性のみを考慮している。他の理論的不確実性の影響についても、将来の研究で検討する必要がある。
統計
グルーオン-グルーオン光度は、102 ≲mX ≲103 GeV の範囲で、NNPDF4.0 では約 3%、MSHT20 では最大 6% 抑制される。
グルーオン-クォーク光度は、同じ領域で、NNPDF4.0 では約 1%、MSHT20 では 3% 抑制される。