核心概念
高エネルギー衝突をシミュレートするために開発されたパートン・ハドロンカスケードモデルPACIAEの最新バージョン4.0では、プログラミング言語をFortranからC++に移行し、PYTHIA 8.3とのインターフェースを提供することで、物理モデルの改善と機能拡張を実現しました。
文献情報: Lei, A.-K., Yan, Y.-L., Zhou, D.-M., She, Z.-L., Zheng, L., Yong, G.-C., Li, X.-M., Chen, G., Cai, X., & Sa, B.-H. (2023). A Brief Introduction to PACIAE 4.0. Computer Physics Communications, 108615.
研究目的: 高エネルギー衝突のシミュレーションに用いられるパートン・ハドロンカスケードモデルPACIAEの最新バージョン4.0の開発と、その改良点、新機能について紹介する。
手法: PACIAE 4.0では、従来の固定フォーマットFORTRAN 77コードを、最新のFortranとC++言語を用いて書き直した。これにより、C++ベースのPYTHIA 8.3とのインターフェースが可能となり、従来のFortranベースのPYTHIA 6.4に加えて、より多くの物理と機能を含むPYTHIA 8.3を使用することができるようになった。
主な結果:
PACIAE 4.0は、FortranからC++への移行により、コード構造が再設計され、PYTHIAのほぼすべての機能を使用できるようになった。
パートン散乱段階では、パートン間の散乱に関連する重いクォークの質量補正断面積が導入された。
ハドロン化段階では、合体ハドロン化モデルが改良され、ハドロン散乱段階には、さらに多くのハドロン-ハドロン反応チャネルが組み込まれた。
PACIAE 4.0プログラムは、オープンソースプラットフォームGitHubとGiteeで公開されている。
結論: PACIAE 4.0は、高エネルギー衝突、特に重いクォークを含む衝突をモデル化する上で、従来バージョンよりも優れた柔軟性と精度を提供する。
意義: PACIAE 4.0は、高エネルギー物理学における現象のシミュレーションと理解を深めるための強力なツールとなる。
制限と今後の研究: 本バージョンでは、媒質誘起放射のモデリングがまだ開発中であり、今後の課題として残されている。また、ハイブリッドハドロン化機構や、ハイドロ-フリーズアウト+フラグメンテーション+合体などのより複雑なハドロン化機構は、まだ考慮されていない。