核心概念
カイラル物質中の電子は、温度勾配などの影響で線形運動が生じると、ベリー曲率と軌道磁気モーメントに依存した軌道磁化を示す。
要約
カイラル運動論と逆渦効果についての論文要約
本論文は、カイラル物質中の電子が時空間依存的な速度場にあるときに生じる「逆渦効果」と呼ばれる現象について論じた論文です。
物質の性質は、外部からの摂動に対する応答を通じて理解されます。特に、量子物質における応答理論は、電気伝導率や磁化などの従来の性質から、量子ホール効果などのトポロジカルな性質まで、多岐にわたる性質を記述します。
物質中の電子は、外部電磁場に応答することが知られていますが、近年、中性粒子の摂動を利用して電磁場を模倣する試みが行われています。
カイラル物質中の電子は、ベリー曲率や軌道磁気モーメントといった量子力学的な性質を持つため、外部摂動に対して特異な応答を示すことが予想されます。
本研究では、時空間依存的な速度場にあるカイラル物質中の電子の応答を、カイラル運動論と久保公式を用いて理論的に解析しました。
速度場によって誘起される軌道磁化に注目し、その応答関数を計算しました。
その結果、静的な速度場に対しては、占有バンドのベリー曲率とフェルミ面上の電子の軌道磁気モーメントの両方が軌道磁化に寄与することが明らかになりました。
一方、時間依存性を持つ一様な速度場に対しては、清浄な系では占有バンドのベリー曲率のみが軌道磁化に寄与し、不純物散乱が存在する系では静的な場合と同様にベリー曲率と軌道磁気モーメントの両方が寄与することが示されました。