核心概念
4次元以上の任意の次元において、負曲率を持つアインシュタイン計量を許容するが、局所対称計量を許容しない閉多様体が無限に存在する。
要約
論文概要
本論文は、Ursula Hamenstädt氏とFrieder Jäckel氏による「グロモフ・サーストン多様体上の負曲率を持つアインシュタイン計量」という研究論文の概要です。
研究背景
- 3次元以下の閉多様体では、負曲率を持つ計量を許容すれば、双曲計量も許容することが知られています。
- しかし、グロモフとサーストンは、4次元以上ではこの主張が成り立たないことを示しました。彼らは、負曲率を持つが双曲計量を許容しない閉多様体(グロモフ・サーストン多様体)を構成しました。
研究目的
本論文の目的は、グロモフ・サーストン多様体上に、負曲率を持つアインシュタイン計量を構成することです。
研究手法
- まず、標準的な算術的双曲多様体から始め、その中に適切な性質を持つ全測地的部分多様体を構成します。
- 次に、この部分多様体に沿って分岐する巡回被覆を考えます。
- この被覆上に、Fine-Premoselliによって導入された近似アインシュタイン計量を構成します。
- 最後に、線形化されたアインシュタイン作用素に対する適切な評価を用いることで、陰関数定理を適用し、近似アインシュタイン計量を摂動して、真のアインシュタイン計量を得ます。
主要な結果
本論文では、以下の結果が示されています。
- 4以上の任意の自然数nと任意の正数εに対して、以下の性質を持つ、互いに微分同相でないn次元閉多様体Xkが無限に存在します。
- Xkは、断面曲率が区間[-1-ε,-1+ε]に含まれるリーマン計量を許容する。
- Xkは、負の断面曲率を持つアインシュタイン計量を許容する。
- Xkは、いかなる閉局所対称空間とも微分同相ではない。
結論
本論文の結果は、高次元におけるアインシュタイン計量の豊かな構造を示唆しており、負曲率を持つアインシュタイン計量を許容するが、局所対称計量を許容しない多様体が、グロモフ・サーストン多様体の中に豊富に存在することを示しています。